WあるいはZを伴って生成されたヒッグスボソンがボトムクォーク対に崩壊する事象(H→bb)を探索する上で最も重要な背景事象はW/Z+bbであるが,この背景事象中のbbはグルーオン分裂によって生成されるため,2つのボトムクォーク間の角度が狭い。一方信号中のボトムクォークは2つのボトムクォーク間の角度が大きい。この違いを利用して,グルーオン分裂により生成されたボトムクォークジェットを識別するためのアルゴリズム開発を行った。その結果,1つのボトムクォークから生成されたジェットの選別効率を80%程度に保ちつつ,グルーオン分裂によるボトムクォークジェットを30%程度に抑えることに成功した。 ATLASアップグレード用シリコン検出器開発においては,以下を行った。 1) 新型シリコンセンサー開発においてはビームテストが必須となる。その際,試験すべきセンサーへの粒子の入射位置を10μm以下の精度で測定する必要がある。そのためのテレスコープと呼ばれる検出器を開発した。シリコンストリップセンサーとSVX4と呼ばれるASICを用いて検出器を製造した後,β線による試験を行い,動作確認することができた。 2) ビームテストの際にビームプロファイルモニターとしてファイバートラッカーを使用する予定である。ファイバートラッカーはシンチレーションファイバーとMPPCからなる。そこで,MPPCからの信号読み出しのための汎用電子回路基板を製作した。 3) 新型シリコンセンサーの電荷収集効率測定のために,Time over Threshold (ToT) からセンサーが生成した電荷量を求める手法を開発した。ピクセルセンサーからの信号はbump bondingされたASICから読み出すが,我々の使用するASICにはアナログ情報の出力がなく,ToTのみ読み出せるため,センサーからの電荷量測定には本研究が必要となる。
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