研究課題
基盤研究(B)
X線偏光測定は、超新星残骸の磁場構造、ブラックホール降着円盤の幾何学など、これまでの撮像分光観測ではみえなかった天体の構造を明らかにする観測手段として、X線天文学の黎明期からその重要性が指摘されてきた。しかし、40年以上前のかに星雲からX線偏光が検出されて以来、他の天体からは有意な偏光検出がなされておらず、新たな進展が強く求められている。われわれは、これに対する一つの打開策として、X線ガンマ線偏光観測専用の小型衛星PolariS計画をすすめている。この計画の目的は、かに星雲の1/100の明るさの数10天体に関して、10-80keVの硬X線領域での偏光測定を実施することである。PolariS衛星の主観測装置は焦点距離を6mに小型化した硬X線望遠鏡と、その焦点面に設置する撮像偏光計である。本研究では、セグメント化されたシンチレータと位置検出型光電子増倍管をくみあわせた撮像偏光計を開発することにある。平成23年度(+繰越分)の研究で、光電子増倍管5台を使用した撮像偏光計のプロトモデルを製作した。中心の1台の光電子増倍管には、2.1mm角のプラスチックシンチレータ柱を8x8=64本並べて反射材をいれて組み上げたブロックを設置した。従来に比べて1/2の詳細度である。データ取得システムに関しては、ヘッドアンプからのデジタルデータ処理装置として、PCとUSB接続できる装置を使うとともに、QLソフトを開発し実験効率を向上させた。この偏光計プロトモデルとデータ取得システムを用いて、実験室内で発生させた22keV偏光X線に対する偏光検出性能を測定した。偏光測定性能因子Mはおよそ60%で、期待値に近いことを確認した。
3: やや遅れている
当初目的の一つである、撮像偏光計の開発に関しては平成23年度(+繰越分)の開発でプロトモデルを製作し、研究室内で偏光検出能力の評価まで行うことができた。得られた偏光検出能力も期待値に近く、位置分解能の向上も達成できたことから目的の主要部分は達成していると考える。ただし、振動耐性の検討は不十分であること、検出効率の面で改良の必要があり、今後の開発要素が残っている。研究開始当初は、衛星搭載目的の撮像偏光計の開発と平行して、気球搭載用偏光計を用いた偏光観測気球実験の準備を計画していた。しかし、気流、飛行経路の面で、上空での観測時間を確保するのが難しい状況が続いている。このため、衛星搭載用装置の開発に重点を置くことに決定した。以上の点から、当初の計画よりやや遅れていると評価とした。
本研究課題では、引き続き、PolariS衛星搭載を目指した撮像偏光計の開発をすすめる。具体的には、平成23年度研究で製作したモデルの放射光施設による本格的な性能評価をおこなうこと、また、低エネルギー側感度向上のためのベリリウム柱の導入を試験すること、ロケット打ち上げの振動に耐える構造を製作することなどがある。また、偏光計とともに重要な硬X線反射鏡の小型化に関してデザインと基礎実験をすすめたい。衛星の姿勢制御、姿勢決定精度といったシステム関係の性能も、偏光観測の精度に大きく影響する。これらに関しても平行して検討をすすめていきたい。
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