研究課題/領域番号 |
23340072
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
越智 敦彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40335419)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 粒子測定技術 / 素粒子実験 / ガス放射線検出器 / μ-PIC / LHC実験 / ハドロン衝突実験 / マイクロメガス検出器 / MPGD |
研究概要 |
次世代高輝度ハドロン衝突実験で予想される、中性子や陽子による高頻度のバックグラウンド環境下で、信号となるμ粒子などによるイベントを安定に観測するための検出器を開発するためには、中性子等の入射を起源とする放電現象を抑制するための試験研究が必要となる。本年度は、前年度に引き続き高抵抗電極型マイクロピクセル検出器の開発を行った。 前年度後半より試作を開始した、陰極に高抵抗電極のみを用いて、誘起電荷により信号読み出しする手法について、今年度の試作では、ある程度安定に動作するものを作製することに成功した。この結果、従来のマイクロピクセル検出器の性能を凌駕するガス増幅率で動作させることが可能となり、さらに高速中性子を用いた放電確率の測定では、従来型の検出器と比較して千分の一~一万分の一程度まで放電の抑制に成功した。今年度の成果により、高抵抗電極を用いたマイクロピクセル検出器の放電抑制に関する動作検証はほぼ達成できたものと考えられる。 一方で、現在進行している次世代高輝度ハドロン実験として、LHC 実験のルミノシティーアップグレードに関する計画がある。このうち、アトラス検出器のμ粒子測定器の一部について2018年より、マイクロピクセル検出器と類似した構造を持つマイクロメガス検出器が採用されることが決定した。このことから、アトラス実験グループのマイクロメガス開発グループに参加することとなった。本年度は、検出器の新しい製法として、高抵抗電極の作成方法にスクリーンプリントを用いる手法を提案し、実際に試作機を作成し動作試験を行った。この結果、これまで使われていたマイクロメガスの試作機と同等の性能を出すことが実証できた。また、今後さらに微細になる電極構造と大量生産を両立させるために、スパッタリングを用いた新たな検出器作製手法を提案している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロピクセル検出器については、当初の試作では十分な性能が得られず、検出器デザインや製造プロセスの見直しを進めてきたが、本年度は、目標としていた以上に放電抑制性能を達成する検出器の試作に成功し、本研究課題における平成24年度までの目標は達成できた。 また、現在計画されている次世代ハドロン衝突実験である、HL-LHC 計画のマイクロメガス検出器開発に参加することになり、特にこの検出器の高抵抗素材部分に関しての開発を担当することになった。このことより、本年度以降の応用開発研究に向けての確実な足がかりを作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初から開発を進めているマイクロピクセル検出器、及び LHC アップグレードに向けて新たに開発を始めたマイクロメガス検出器のいずれとも、高抵抗電極を用いることにより、高速中性子を用いた高輝度ハドロン環境下でも、かなり安定動作させることができるようになったことから、今年度以降は、多チャンネル読み出しによる粒子のイメージング、及び大型検出器作成へ向けて有効な、新たな製造プロセスによる試作・試験を行う。 いずれも、LHC 実験のATLAS 検出器アップグレードの研究グループと協力することにより研究を進めていき、直近の高輝度ハドロン衝突実験計画である、LHC アップグレードにおける、我々の研究成果の導入を目指す。
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