研究課題
本年度は、昨年度に引き続き次世代高輝度のハドロン衝突実験である HL-LHCに向けたATLAS検出器アップグレードに関わる開発を中心に行った。本課題研究で昨年度開発した、炭素スパッタによる高抵抗電極は、大面積かつ高精細のパターンが作成可能で、物理的・化学的にも安定した非常に理想的な素材であったが、ATLAS アップグレードで要求されている表面抵抗値(約500kΩ/□)を実現するためにはかなり厚膜のスパッタが必要であり、量産時に製作時間が多くかかってしまうという難点があった。これに対して本年度は、窒素をドープすることにより、抵抗値を下げる新たな手法を考案した。そのため、窒素のドープ量と抵抗値の関係を求め、ATLAS 実験に適したドープ条件を得ることができた。これにより抵抗値のコントロールと製作時間の大幅な短縮を実現することに成功した。さらに、本年度は高抵抗電極を安価に量産するためにスクリーンプリントによる作製する手法も継続的に開発し、電極パターンの精度はスパッタに若干劣るものの ATLAS アップグレードには十分な品質で安価な抵抗電極薄膜の開発にも成功した。これらの開発をもとに、2種類の方法で大型抵抗電極薄膜が作成可能となり、実際にこれらの方法で大型(2m×50cm程度)の抵抗フォイルの試作を行った。これらの試作品の評価から、ATLAS マイクロメガスの抵抗電極の量産に関しては、我々の日本グループの製作技術が採用されることになり、本研究課題の最終的な研究目的として設定した、「国際協力による大型の加速器実験への採用」について達成することができた。また、本研究の実績をもとに、今後のATLAS マイクロメガス検出器開発を目的とした研究(基盤A 15H02092「高ルミノシティLHCに向けたATLASミューオン検出器システムの高度化」)へ引き継がれることになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of Science, TIPP2014 (2014) 351
巻: TIPP2014 ページ: 351
http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~upic/