研究実績の概要 |
本研究の目的は、阪大核物理研究センターにおいて、エネルギー295MeVで陽子酸素反応実験を行い、前方の陽子のエネルギーを高分解能で測定できるグランドライデン装置と新たに設置するガンマ線検出器群とで同時測定し、各励起エネルギー毎のガンマ線生成の分岐比を研究期間内に測定することであった。巨大共鳴状態からのガンマ線分枝比の測定データは存在しないので、その測定は原子核物理学の基礎データとして重要である。また、中性カレントニュートリノ酸素反応でのガンマ線生成は、将来の超新星爆発ニュートリノ観測実験や低エネルギーニュートリノ振動実験でも重要であり、本研究での高分解能実験は酸素原子核の励起とガンマ線に関する詳しい情報を与える世界でも唯一のものであった。 我々は、最終年度に阪大核物理研究センターにおいて実験を実施し、酸素・炭素標的で各40時間、30時間のデータを取得した。2時間分のデータ解析から、酸素炭素標的共に励起エネルギーEx=2-30MeVにおいて巨大共鳴を含むきれいな励起スペクトル(精度100KeV)が確認できた。それらは過去のデータとも合っている。さらに、目的の巨大共鳴状態からのγ線も各2万, 1万事象測定できた。それらは、巨大共鳴状態から核子崩壊後の娘核の励起状態からγ線を放出するという理論予想と定性的に正しいとあると結論された。これらの予備結果は、最終年度の日本物理学会や国際会議で発表した。現在、我々の目標である全データの較正と巨大共鳴状態からのγ線分岐比の評価を行っている。全テータを解析すると巨大共鳴からのγ線事象数は40万、20万個と見積もられる。 東北大震災が研究期間中に起こった結果、施設の耐震補強工事が入り、1年間実験が遅れたが、順調にデータが取得できた。1年遅れではあるが、今年度論文出版まで出来るように努力する。
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