研究課題/領域番号 |
23340074
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
志垣 賢太 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70354743)
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研究分担者 |
杉立 徹 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80144806)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パートン多体系 / 高エネルギー原子核衝突 / 粒子生成機構 / 宇宙創成 |
研究概要 |
我々は RHIC-PHENIX 実験においてパートン非束縛相の生成を明らかにし、パートン多体系の性質の根幹を成す非束縛クォークの挙動解明への舞台を整えた。平成 22 年に本格稼働を開始した世界最高エネルギーの加速器 LHC を用い、この実験クォーク物理学の本来課題の決着に挑む。RHIC 加速器において同相生成の最初の証左となった高横運動量ハドロンに着目し、LHC 加速器において鍵となる重クォークとのリンクにより、高温非束縛クォーク間の相互作用を解明する。第一に陽子相互衝突における生成中間子スケーリング則(またはその破れ)から人類未到エネルギーでの粒子生成機構の解明と理解、第二に原子核相互衝突における変位測定による非束縛クォーク挙動の解明、の 2 点を柱に、LHC-ALICE 実験当初数年間の最も本質的な物理成果を目指す。 平成 24 年度は重心系エネルギー 8 TeV の陽子相互衝突および比較対照実験として重要な陽子 + 鉛原子核衝突事象を収集した。平成 23 年度までに収集済の陽子相互衝突および鉛原子核相互衝突事象と併せて、ALICE 実験の高性能光子検出器 PHOS 等を駆使して中性中間子の多種崩壊過程測定解析を推進した。特に陽子相互衝突では高エネルギー光子トリガを用いて収集した事象の解析に焦点を当て、PHOS 検出器の世界最高レベルの 2 粒子分解能と併せて、より高い横運動領域での測定を主導中である。 これらの成果を複数の国際会議および国内学会などで公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHC 加速器 ALICE 実験を順調に推進している。平成 24 年度までに重心系エネルギー 8 TeV までの陽子相互衝突事象、ALICE 実験の主眼である鉛原子核相互衝突事象、比較対照実験として重要な陽子 + 鉛原子核衝突事象の第一次収集を完了した。 本研究課題における研究目標の第一の柱である人類未到エネルギーでの陽子相互衝突における粒子生成機構の解明と理解に向けて、特に高エネルギー光子トリガを用いて収集した事象の解析に焦点を当て、高い横運動領域での生成中間子スケーリング則(またはその破れ)の検証を順調に進めている。今後、第二の柱である非束縛クォーク挙動の解明に向けて、原子核相互衝突における変位測定を併せて展開する。
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今後の研究の推進方策 |
平成 24 年度に当初 1 年間予定された、LHC 加速器の設計エネルギー(陽子相互衝突で 14 TeV、原子核相互衝突で核子対あたり 5.5 TeV)運転に向けた加速器改良整備のための運転停止が、平成 24 年度終盤からに延期となるとともに約 2 年間と長期化された。平成 25 年度は、この運転停止期間を利用し、平成 23 年度に収集済の原子核相互衝突事象の高粒子多重度に対応した解析手法の細部までを、上述の PHENIX 実験における経験実績をも駆使して確立する。LHC 加速器では現時点で RHIC 加速器の 16 倍の衝突エネルギーが利用可能であり、高い横運動量領域の粒子生成断面積は約 3 桁も増加する。これを利用して統計的にも RHIC 加速器稼働以来現在までの約 10 年間を凌駕する成果を得る。 陽子相互衝突からの線形外挿と原子核相互衝突との比較により、横運動量の高い領域での各種中間子の収量抑制から、初期パートン衝突で弾かれた非束縛クォークの横運動量損失を測定する。構成クォークの異なる多種粒子の系統測定により、RHIC 加速器で未解決のクォーク種依存性までを明らかにする。クォーク運動学と衝突幾何学のリンクにより、パートン多体系の性質の根幹を成す非束縛クォーク間の相互作用を解明する。
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