前年度までに、すでに新しい実験室において腕共振器の共振状態の実現に成功している。腕共振器は2重振り子として吊り下げられた20mgの超軽量鏡と、同じく2重振り子として吊り下げられた1インチ鏡からなる。 しかし、新しい実験室は数Hzの低周波領域で振動レベルが以前の実験室と比べ10倍程度大きく、腕共振器の安定な動作が困難であり、そのままでは干渉計の光学機械的な特性評価ができないことが判明した。そこで、防振システムの大改良を施し、低周波領域での振動レベルを以前の実験室と同程度まで引き下げることにした。 これまでの防振装置は弾性体の上に置かれたブレッドボード(1)からブレッドボード(2)を吊り下げ、その上に2重振り子懸架鏡システムを配置するものであった。しかし、弾性体とブレッドボード(1)の系では、10Hz程度以下の低周波数領域では防振効果を持たないため、これを、懸架システムに取り換えた。すなわち、真空槽の底にブレッドボード(0)を設置し、そこにポールを立て、ポールの上部の構造体からブレッドボード(1)を吊り下げた。これにより、数Hzの周波数での振動レベルが以前の10分の1程度に抑えられ、腕共振器の安定な動作が可能となった。 次に、腕共振器の光学機械的な特性評価、具体的には、超軽量鏡の角度方向の共振周波数が共振器内のレーザーパワーにどのように依存するかを実験的に確かめた。これまでは、超軽量鏡の角度揺れを光てこで検出しそのスペクトル密度から共振周波数を判断してきたが、今回は1インチ鏡に加えるトルクから角度揺れへの伝達関数を測定するという、より信頼度の高い測定方法を用いた。 また、輻射圧雑音の低減にとって重要な光学的ロスの問題を解決するための一助として研究を行なってきた、「輻射圧を用いた光検出器の量子効率の較正」については研究結果を論文としてまとめて発表した。
|