研究課題/領域番号 |
23340078
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
石元 茂 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50141974)
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研究分担者 |
鈴木 祥仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 専門技師 (00391722)
澤田 真也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70311123)
小沢 顕 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (80260214)
今井 伸明 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (80373273)
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キーワード | 原子核(実験) / 固体パラ水素標的 / 固体水素昇華圧 |
研究概要 |
これまで我々は原子核実験用として4K小型冷凍機を用いて各種の固体水素ターゲットを開発してきた。 固体水素を作成した両側のフランジを真空中で開放するという方法で最小厚さ3mmまでの薄い両側窓なしの固体水素標的の開発を行った。また、厚さ~10μmの薄膜フィルム間に厚さ1~5mmの固体水素ターゲットの作成を行った。さらに、直径30mm長さ50~100mmの大きい固体水素標的を開発した。 H23年度は4K小型冷凍機を用いた「水素ガス吹付け方式」の薄い片面窓なし固体水素ターゲットの製作と開発を行った。これは約4Kに冷却した厚さ5μmの純銀薄箔上に厚さ0.35mm、直径6mmの固体水素をガス吹き付け法によって作成するものである。また、作成した薄い固体水素ターゲットの性能試験を行い当初の目的に沿った性能が達成できていることが確認された。この固体水素ターゲット装置一式はH23年度末にTRIUMPFに運送され、H24年度には現地での冷却テストを行いRIビーム実験に用いられる。 これらの技術をさらに発展させることで、H24年度にはまず円柱型の全方向窓なしの固体水素標的を「ガス吹き付け法」でテストする。この開発では「ノーマル水素」に比べて低温(~4K)で約300倍の熱伝達率をもつ「パラ水素」を用いる。固体水素はパラ水素の比率が高くなるにつれて熱伝達率が良くなるので、直径10mmの固体パラ水素の場合、円柱方向には全周方向に窓なしの厚さ10mm以上の固体薄肉標的の作成が可能である。 円柱状の固体水素ターゲットが完成すると、同じパラ水水素の吹き付け方法で厚さ1~3mmの薄い固体パラ水素ターゲットの開発を行う。この開発には固体水素を任意の薄い形状に作成する新技術が要求されるため、新しいアイディアと試行錯誤が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室で既に稼働している実験設備を用いて今回の固体水素開発の一部分を開始する予定であったが、3.11の東日本大震災で実験室設備が被災し長期間研究に支障が生じた。復旧後は順調にRIビーム実験用の固体水素の開発と性能テストができ、ビーム実験に向けて準備ができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、カナダTRIUMFに移送した「吹き付け方式の片面窓なし固体水素」の実験設備と同等の実験設備を準備している。このTRIUMFでの固体水素ターゲットを用いたビーム実験を年度初めに実行する予定である。 KEKではできるだけ早く薄い窓なし固体水素のテストが再開できるように尽力する。薄い固体水素を効率よく冷却するにはパラ水素が必要であるが、オルソ・パラ水素の変換器は製作完了している。これを用いて4K小型冷凍機とクライオスタット、水素ガス供給装置が稼働できるようになればその性能テストを行う。 吹き付け方式の「薄い両面」窓なし固体水素の開発にはアイディアと試行錯誤が必要である。そのためできるだけ機会を設けてメンバーと議論を行って設計・試作・冷却テストを効率よく行う。
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