研究課題/領域番号 |
23340078
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
石元 茂 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50141974)
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研究分担者 |
鈴木 祥仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 専門技師 (00391722)
澤田 真也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70311123)
小沢 顕 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (80260214)
今井 伸明 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (80373273)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 原子核(実験) / 固体パラ水素標的 / 固体水素昇華圧 |
研究概要 |
これまで我々は原子核実験用として4K小型冷凍機を用いて各種の固体水素ターゲットを開発してきた。固体水素を作成した両側のフランジを真空中で開放するという方法で最小厚さ 3 mm までの薄い両側窓なしの固体水素ターゲットの開発を行った。 現在、蓄積リング用固体水素ターゲットの開発と低エネルギー原子核実験用固体水素ターゲットの開発を継続して行っている。これらのターゲットにはさらに薄い固体水素( < 1 mm )が要求されている。今回の開発では低温の金属に水素ガスを吹き付ける方式を用いることにより、厚さ 1 mm 以下の薄い固体水素ターゲットを実現することを主目的として開発している。 まず、ガス吹付方式で 4.2 K 以下の低温の片面金属上に水素ガスを 0.05-0.1 mm の厚さ固化形成する方法で「片面窓なし固体水素ターゲット」を開発した。2012年6月に我々が KEK で開発したこの片面金属の窓なし固体水素ターゲットをカナダ TRIUMF に持ち込み実験準備と RI ビーム実験(IRIS)を行った。 この時、固体水素を十分低温に保つために必要な、ターゲットを取り囲む輻射シールドと物理実験で要求される散乱立体角の輻射シールドの散乱開口部の大きさを最適化する必要があった。このために RI ビームを用いた散乱実験により固体水素ターゲットの厚さの時間変化を測定した。当初開口部を十分大きくしたため、固体水素の温度が約 1 K 上昇し、蒸発スピードが約 12 時間となり実験できる限界の蒸発速度であった。そのため、開口部を抑えた輻射シールドを追加製作し温度を約 4 K に下げ、固体水素の減少は数日間のビーム実験期間では統計誤差以下で無視できる程度に抑えられた。 この薄膜金属を用いた片面窓なし固体水素による水素蒸発速度測定で、両面窓なし固体水素に移行するにあたっての貴重なデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災で実験室設備が被災したが、復旧後は順調にRIビーム実験用の固体水素の開発と性能テストができ、装置をカナダ TRIUMF に運送し RI ビーム実験(IRIS)を 2012年に2回にわたって行った。さらに、2013年6月に行われる固体水素および固体重水素を用いたビーム実験用に固体水素ターゲットの開発と準備が進んでいる。 ここで得られたビームによる散乱データを用いた蒸発速度測定で、4K 小型冷凍機で窓なし固体水素ターゲットが実用可能であることを示した。 一方、両面窓なし固体水素を用いたアメリカ Fermi 研究所蓄積リングでの実験プロポーサルは不採択となり、固体水素ターゲットは将来の蓄積リング内実験や大強度プライマリービームに備えた開発となっている。 蓄積リング用固体水素標的の開発と低エネルギー原子核実験用薄型固体水素の開発は、基本的にはパラ水素を用いてガス吹付方式で固体水素を製作するという、同じ原理と方法での開発であり原理的な方向性には変化がない。 できるだけ早急にパラ水素のテストベンチを整備し、水素のパラ化と冷却テストを行うよう計画している。
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今後の研究の推進方策 |
蓄積リングでの実験プロポーサルは不採択となり、低エネルギー原子核実験用薄型固体水素開発への比重のほうが大きくなっている。現実に物理実験が行われている TRIUMF での RI ビームによる薄膜金属を用いた窓なし固体水素(重水素)による実験が優先されるが、両面窓なし薄型固体水素の開発を並行して推進する。 H25年度にはまず円柱型の全方向窓なしの固体水素標的を「ガス吹き付け法」でテストする。この開発では「ノーマル水素」に比べて低温(~4 K)で約300倍の熱伝達率をもつ「パラ水素」を用いる。固体水素はパラ水素の比率が高くなるにつれて熱伝達率が良くなるので、直径 10 mmの固体パラ水素の場合、円柱方向には全周方向に窓なしの厚さ 10 mm 以上の固体薄肉標的の作成が可能である。 この円柱状の固体水素ターゲットは、J-PARC などで行われている中高エネルギー原子核散乱実験において、初めてすべてのビーム方向および散乱方向に対してバックグラウンドとなる水素以外の物質が全くないという理想的な水素ターゲットとなる。 円柱状の固体水素ターゲットが完成すると、同じパラ水素の吹き付け方法で厚さ 1~3 mm の薄い固体パラ水素ターゲットの開発を行う。この開発には固体水素を任意の薄い形状に作成する新技術が要求されるため、新しいアイディアと試行錯誤が必要なチャレンジングなものである。 我々は固体水素・重水素ターゲットのほかに液体水素・重水素、液体ヘリウム3、液体ヘリウム4、などの低温ターゲットを開発し、国内外のビーム実験を行っている。これらを並行して開発することで、総合的な実験用低温ターゲット技術のさらなる推進をしていく。
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