研究課題
当初主テーマとして計画したブリスタリングに関する実験はJ-PARCハドロン実験施設の放射能漏れ事故を受けて、全加速器の安全点検を行なうこととなり、われわれの装置の継続使用は困難となった。一方ベリリウムがブリスタリングに対して弱いことはインディアナ大学の故障例で明らかである。医療用BNCT装置のような強力中性子線源ではわれわれの試算では数日の寿命である。ブリスタリングに強い水素吸蔵合金をブリスタリング緩和材として用いるための基礎研究を進めた。用いた試料はタンタル、ニオブ、チタン、パラジウム等であった。ビームはベリリウムを通過し、この緩和材中で止められる。さらにこの大容量熱負荷を除去するには銅のヒートシンクの採用が必須であり、ベリリウムで中性子を発生、緩和材でプロトンビームを停止、銅ヒートシンクによる熱除去の三層構造をわれわれの設計の基本とした。ここで重要なことは三層の接合方式の開発である。この接合には放射化の観点から微量とは言えロウ付けの材料を用いず、素材だけの拡散による接合を開発の第一目標とした。その結果、この三層構造の熱伝達率はレーザーフラッシュ法による計測で理想状態で接合したものと同じものが得られた。接合強度も十分であった。一方製作した試料が数ヶ月の期間を経て、表面が微粉末の様態を呈する状態となることを見いだした。ベリリウムは毒性があることが知られていることもあり、この現象を解明する必要に迫られ、特別な装置、施設を持つ専門メーカーに協力を依頼し、表面の状態の調査を行なった。この現象は、耐ブリスタリング特性を持たせるための三層構造の標的の製造方法から来ており、製造上必須の剥離材とベリリウムとの化学的反応生成物の長時間の状態の変化であることが判った。この現象を解析することで三層構造の標的の製造方法の信頼性を向上させることとなった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. of the 10th annual meeting of the Particle Accelerator Society of Japan
巻: 10 ページ: -
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