研究課題/領域番号 |
23340083
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三森 康義 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70375153)
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キーワード | 光物性 / 半導体量子ドット / 量子エレクトロニクス |
研究概要 |
半導体量子ドット中の励起子分極の光誘起縦電場効果を解明するために、試料のIII-V族系自己形成型半導体量子ドットの基礎特性の取得を主に行った。量子ドット中の励起子分極の縦電場効果は励起子分布数差(ポピュレーション)に依存して共鳴エネルギーが動的にシフトする。このシフト量は反電場シフトと呼ばれ、量子ドットの縦電場効果を解明するために非常に重要な物理量となっている。反電場シフトは励起子分極のダイポールモーメント、励起子分極の空間的な拡がりから評価することが可能であるため、これらの基礎物性量の評価を行った。励起子分極のダイポールモーメントの評価はポンプ-プローブ法による励起子の寿命測定から行い、約15デバイと評価することができた。また励起子の波動関数の空間的な拡がりは、試料の原子間力顕微鏡(AFM)像からの量子ドットの大きさの直接評価と、単一量子ドット分光を用いた励起スペクトルの測定を行い、励起子基底状態と励起状態のエネルギー差より推定する2つの方法で行った。励起子波導関数の拡がりは結晶軸方向が約5nm、横方向の大きさが約20nmと評価することができた。これらの基礎物性量から、用いる試料の反電場シフトは約20μeVと評価することができた。また、単一量子ドットにおいてポンプ-プローブ法によるラビ振動の測定や、フォトンエコー法によるラビ振動の測定を行った。特にフォトンエコー法によるラビ振動の測定においては上記の反電場シフト量を用いた数値計算結果が実験結果を非常に良く再現することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体量子ドットの光誘起縦電場効果は励起子分布数差(ポピュレーション)に依存した共鳴エネルギーの動的シフトを光学効果として出現させる。このエネルギーシフトは反電場シフトと呼ばれ、すべての光誘起縦電場効果が関与する光学応答を明らかにする上で重要な物理量となっている。このため研究計画の初期の段階で反電場シフトを実験的に求めることに成功したことは、今後の研究計画の効果的な進捗、数値計算による実験結果の解析を行う上で非常に重要な意味をもつと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
半導体量子ドットにおいてフォトンエコースペクトルの取得や、単一量子ドットにおいて励起子ラビ振動を測定し、半導体量子ドット中の励起子の光誘起縦電場効果特有の光学応答の抽出を行い、それを用いた量子ドットの新しいコヒーレント制御法の開発を行う。また、平成23年度に取得した反電場シフト量を基に数値計算による光学応答の解析を行う予定である。
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