研究課題/領域番号 |
23340086
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60240818)
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研究分担者 |
蓑輪 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50609691)
石原 一 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (60273611)
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キーワード | 量子ドット / ナノ材料 / 光ピンセット / 応用光学・量子光工学 / 光物性 / 超流動ヘリウム / レーザーアブレーション / 微小共振器 |
研究概要 |
本研究では、超流動ヘリウム中で光によって半導体ナノ微粒子を作製し、光による運動制御を駆使して、その選別、配列などを行う新奇技術を確立することを目的としている。また、作製された単一粒子や集合系の新奇な光学応答とその制御法も調べる。 今年度はZnOを主たる対象として、ヘリウム中でレーザーアブレーションを行ってナノ微粒子を作製し、結晶性に優れた微粒子を得るための最適条件を調べた。作製された微粒子を透過電子顕微鏡を用いて高い空間分解能で観察したところ、格子縞が観測できるほど品質の高い単結晶微小球を数多く発見し、格子定数がバルク結晶と一致することを見いだした。また、その粒径は数nmから数百nmに渡っており、大き過ぎて透過電子顕微鏡では観測できないマイクロ粒子も単結晶となっていることが推測された。実際、粒径1-2μmのZnO球において、閾値が非常に低いレーザー発振を観測し、結晶性と真球性の高さを物語っている。急冷によるアモルファス成長などが懸念される超流動ヘリウム中での作製であるにも関わらず単結晶が得られていることに加え、結晶構造がウルツ鋼型で六方晶系に属するZnOにおいては異方的なナノワイヤーなどの成長が通常見られているが、単結晶微小球の作製成功はこうした従来の常識を覆すものである。これは超流動ヘリウム中におけるレーザーアブレーションによる微粒子作製が、ZnOに限らず、様々な物質において結晶微小球を作製する有力な方法となり得ることを示している。 また、作製された微粒子を粒径に応じた閉じ込め励起子準位に共鳴したレーザーを用いて、サイズ選別を行うことにも成功し、それらの発光スペクトルを初めて観測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来の予想を覆し、超流動ヘリウム中という極低温下のレーザーアブレーションにおいて、単結晶ナノ粒子やマイクロ球の作製に成功し、さらに、それを透過電子顕微鏡観察により明瞭に確認できたため。光マニピュレーションの対象となる微粒子群の品質が非常に高いことは、今後の研究の進展に極めて有利に働くものである。
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今後の研究の推進方策 |
作製された微粒子を粒径に応じた閉じ込め励起子準位に共鳴したレーザーを用いて、サイズ選別を伴うマニピュレーションを行う際、レーザースペクトル幅を狭窄化し、輸送・選別されるナノ粒子のサイズすなわちエネルギー準位の分布幅をより狭くすることを行う。 また、輸送先のSi基板上に金属微小構造を作製してナノ粒子の配列を行う予定であるが、石原グループの計算結果によると、nmサイズの構造作製が必要であり、実験の進展を促進するため、ノウハウをもつ研究グループとの共同研究を計画している。
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