研究課題
本研究では、超流動ヘリウム中で光によって半導体ナノ微粒子を作製し、光による運動制御を駆使して、その選別、配列などを行う新奇技術を確立することを目的としている。また、作製された単一粒子や集合系の新奇な光学応答とその制御法も調べる。今年度はZnOの他、バンドギャップが可視域にあり、光電変換素子などへの実用可能性も高いCdSeも対象に加えた。この物質は、励起子結合エネルギーがZnOより小さく、電子・正孔個別閉じ込め系であるため、これまで通りの光マニピュレーションが可能であるか自明ではなかった。この材料に対しても、液体ヘリウム中のレーザーアブレーションを行い、ナノ粒子を作製できることを確かめた。さらに、マニピュレーションレーザーを照射することで、これまでと同様の量子ドットの光による輸送に成功した。これにより、本手法の一般性を確認することができた。理論面では、これまで共鳴光ピンセットの理論と実験で矛盾していた点を、非線形光学効果を輻射力の計算に取り入れることにより、包括的に矛盾なく説明することに成功し、さらにそれを上手く活用することにより新しい光マニピュレーションが可能であることを示した。この成果は米国物理学会速報誌「Physical Review Letters」に掲載された。また、米国物理学会Web誌PhysicsのFocus欄に、非専門家や学生に向けて、科学記者が論文の内容を解りやすく説明した読み物として紹介された。また、ここで提案した機構を活用することにより、従来よりも高効率な単分子捕捉方法を理論的に提案した。この手法により、これまで困難であった単分子の長時間捕捉が可能になると期待される。この成果は欧州物理学会誌「European Physical Journal B」に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に加え、可視域にバンドギャップがあり、太陽光発電等、実用化が期待される半導体CdSeの量子ドット作製、さらに光マニピュレーションにも成功した。理論研究でも、これまで謎であった実験と理論の不一致が、非線形光学効果に起因することを明らかにすることができた。
これまで量子ドットのエネルギー準位選別を伴う光マニピュレーションとその対象拡大に成功してきたが、それを踏まえて、量子ドットの配列を制御することを試みる。そのための理論グループとの詳細な打ち合わせも進める。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 3件)
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