研究課題/領域番号 |
23340087
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
溝口 幸司 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10202342)
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研究分担者 |
河相 武利 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00214586)
大畠 悟郎 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10464653)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | キャビティーポラリトン / ラビ振動 / コヒーレントフォノン |
研究概要 |
超短パルスレーザーを試料に照射することで,コヒーレンスを有するフォノンや励起子などの物質波(コヒーレント波束)が生成される。このコヒーレント波束は,テラヘルツ電磁波(THz波)の放出や吸収を生じ,さらにはTHz波の誘導放出の可能性を有している。そこで,本研究において,THz領域変調分光装置を開発および活用し,半導体ナノ構造薄膜を主対象として,励起子やキャビティ-ポラリトンによるコヒーレント波束の生成・緩和ダイナミクスを明らかにすることを目的としている。 前年度開発したTHz領域変調分光装置を改良し、測定帯域幅等の性能の向上を行った。改良したTHz領域変調分光装置を用い,微小共振器構造を有する銅ハライド・ナノ構造薄膜において,キャビティ-ポラリトンのコヒーレント波束に関する生成・緩和ダイナミクスの研究を行った。その結果,CuCl半導体微小共振器において,キャビティ-ポラリトンにおけるラビ振動,および,励起子-光子間の弱結合モード同士の量子ビートを始めて観測した。得られたラビ振動の緩和時間は1ピコ秒以内と非常に速く,ポンプ光の入射角を変えることで,自在にラビ振動の振動数が変化することがわかった。さらに,ラビ振動の振動振幅が大きく,その振動数が活性層の縦光学フォノンの振動数に近くなると,コヒーレント縦光学フォノンが著しく増強されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キャビティーポラリトンにおけるラビ振動の観測や,弱結合モード同士による量子ビートの観測ができ,その特性について知見を得たことは,目的の大半を達成している。また,コヒーレントフォノンがラビ振動によって増強されるという結果は,予想しなかった成果であり,本研究で始めて得た研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに開発および改良したTHz領域変調分光装置を用い,微小共振器構造を有する銅ハライド・ナノ構造薄膜において,キャビティ-ポラリトン間のコヒーレント波束である量子ビート(ラビ振動)に関して下記の課題研究を行うことで、キャビティ-ポラリトンの緩和ダイナミクスに関する知見を得ることを目指す。 1.キャビティ-ポラリトンによる量子ビート(ラビ振動)の生成・緩和ダイナミクスに関する研究 2.ラビ振動からのTHz電磁波発生に関する研究 3.キャビティ-ポラリトンにおける準位間遷移による誘導放出の可能性に関する研究 上記の研究から得られる成果と,前年までに得られた研究成果を集約し,キャビティ-ポラリトンによるコヒーレント波束の生成・緩和ダイナミクスに関する知見をまとめる。
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