研究概要 |
(A) 空間分割第一原理計算手法を利用したconstraint スキームの開発については、マルチQM/MM法・ダブルQM/MM法を完成させ、本研究の最低限の目的を達成した。ドナー・アクセプター間の外圏型電子移動に対して、ドナー領域、アクセプター領域それぞれwell definedな電子数およびスピン多重度を指定した量子力学(QM)計算が可能で、かつドナー・アクセプター間の距離に依存した酸化還元反応物理量を計算できる手法としては世界初となっている。本計算手法は様々な(DFTの様々な汎関数形などの)QM計算手法と古典力場(MM)計算手法の組み合わせが可能な形に研究室コードQMS内に導入され、多くの生体系や溶液系の電子移動過程への適用が可能となっている。ダブルQM/MM法の実証として遷移金属イオン(Fe2+/3+,など)の酸化還元反応に関する物理量ー酸化還元電位・再配置自由エネルギー・電子移動遷移行列・電子移動反応定数ーのドナー・アクセプター間の距離依存性、接触極限、希薄溶液極限を計算し、精度が十分あることを確認した。結果をまとめた論文は現在ACS系の論文雑誌にて査読中である。本計算手法は原理的に界面スラブと溶質分子をドナー・アクセプターに指定して界面電子移動反応も取り扱うことが可能であり、今後固液界面反応への展開を図る予定である。またFMO-LCMO法についても高精度化が終了し、今後ダブルQM/MM法との融合を図っていく。 (B)ダブルQM/MM法の展開と閉空間電子数に関するconstraint DFT手法の更なる適用を図る為に、電池・触媒系を中心に実在系の固液界面や溶液中の状態に関する平衡状態・化学反応探索も引き続き行った。特にリチウムイオン電池に関連した電解液分子の還元反応については新しい分解メカニズムを発見し、J. Am. Chem. Soc.に論文が掲載された。
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