研究課題/領域番号 |
23340091
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大野 圭司 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (00302802)
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キーワード | エンタングルメント / 半導体 / 量子ドット / 核スピン |
研究概要 |
本研究は半導体量子2重ドット結合系において1重項スピンブロッケード効果を出発点に、核スピン反転を伴う1重項から3重項への電子スピンを繰り返すことにより、一方のドットに局在している核スピンの多くが他方のドットに局在する核スピンと1重項的にエンタングルしている状態を作り出だすことを目的とする。平成23年度は、研究計画書にあるとおり研究に必要な15Tマグネットシステムを導入し、既設の核スピン効果測定用1.5Kインサートと組み合わせた測定系を整備した。またナノ秒スケールのDCパルス制御ラインをインサートに組み込み、エンタングルメントの収縮を核スピンのコヒーレンス時間内に行う実験の準備をおこなった。 15Tマグネットシステムの導入・立ち上げ作業と平行し、既設設備である8Tマグネットとヘリウム3冷凍機を用い予備実験をさらに詳細におこなった。この結果、6Tから8T程度の磁場中において、1重項スピンブロッケード領域とその周辺でのソースドレイン電流・電圧特性に核スピン偏極に起因すると思われるヒステリシスを見いだした。ヒステリシスは2カ所のソースドレイン電圧において観測され、それぞれの点において核の偏極方向が逆向きであることを示唆する結果となった。現在これらのシステリシスを2電子エネルギー状態とを比較することで核スピン偏極に寄与する電子状態の同定を進めている。 また数値シミュレーションによりドットに含まれる核スピン数に対するエンタングルした核スピンペアの割合"1重項率"について見積をおこなった。この結果、十分大きな数の核スピン集団について、1重項率が50%であること見いだした。この値は、計画書に述べたエンタングルメントの生成および検出を行うに十分な値である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
8Tマグネットを用いた予備実験において既にスピン1重項電子状態からと思われる核偏極を見いだした。これは平成24年度の研究計画を一部前倒しで遂行できたことになる。
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今後の研究の推進方策 |
15Tマグネットを用いた実験を行い、予備実験で見られた1重項スピンプロッケードと核スピン効果についてより詳細な研究をおこなう。電流電圧特性に見られたヒステリシスについて、高磁場中2電子状態との比較を行い、核スピン偏極に寄与する電子状態の同定を行う。その後、NMR共鳴周波数の交流磁場を印加すつことで核スピン偏極を消去し、得られる無偏極状態に核スピンエンタングルメントが現れるかを調べる。ヘリウム3冷凍機を用いた予備実験より、当初計画していた1.5Kの測定よりもより低い温度のほうが電流電圧特性のヒステリシスがより明瞭であった。したがって15Tマグネットにヘリウム3冷凍機を組み込むことも検討する。
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