本研究は半導体量子2重ドット結合系において1重項スピンブロッケード効果を出発点に、核スピン反転を伴う1重項から3重項への電子スピンを繰り返すことにより、一方のドットに局在している核スピンの多くが他方のドットに局在する核スピンと1重項的にエンタングルしている状態を作り出だすことを目的とする。今年度は平成24年度にに引き続き1重項スピンブロッケード領域とその周辺でのソースドレイン電流・電圧特性に核スピン偏極に起因すると思われる電流ヒステリシスの詳細な測定および解析を行った。電流ヒステリシスと2電子エネルギー状態との詳細な比較により、1重項スピンブロッケードから弾性的に遷移可能な3重項状態の個数とそのデチューニング(ソースドレイン電圧)に対する位置が磁場とともにどのように変化するかをシミュレートし実験との比較を行った。量子ドットの2電子基底状態が3重項状態へ遷移する磁場(T=5T付近)において、1重項-3重項準位交差は2つあり、磁場とともにそのデチューニング位置が変化する。またこれら2つの交差点はそれぞれ3重項Sz = -1、3重項Sz=+1との交差であり、核スピン反転を伴う遷移によりそれぞれの交差点で核は逆方向に偏極することがわかった。またこれらの交差点は1重項スピンブロッケード状態とブロッケードが解ける状態との境界近くに位置することが解った。これらの結果は観測結果に一致している。これまでの結果の第一報は昨年度Appl.Phys.Lett誌に投稿し受理されている。現在上記結果をもとにした論文を作製中である。
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