研究課題/領域番号 |
23340093
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20303894)
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研究分担者 |
足立 匡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40333843)
石井 賢司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門構造物性研究ユニット, 研究副主幹 (40343933)
山瀬 博之 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境・エネルギー材料部門超伝導物性ユニット, 主任研究員 (10342867)
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30396519)
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キーワード | 高温超伝導 / 量子ビーム / 単結晶育成 |
研究概要 |
角度分解光電子分光などで電子状態が精力的に調べられている銅酸化物高温超伝導系Bi2+xSr2-xCuO6+dの希薄ドープ組成において、高エネルギー(150meV)までの磁気励起スペクトルの観測に初めて成功した。観測されたスペクトルはスピン波励起のような明瞭な分散を示さず、 (π,π)を中心に波数空間に拡がった形状である。局所磁化率は同じ単層構造をもつLa2-xSrxCuO4とかわらないことから、超伝導の発現に長距離スピン相関が必要でない可能性を示唆している。また、頂点酸素がなくCuが平面4配位しているT'構造のホールドープ系を作成し、同系における磁気超伝導相図の電子・ホール対称性を明らかにすることができた。Ce置換による電子ドープではドーピングに従って反強磁性転移温度は減少するが、Srによるホールドープでは転移温度はほとんど変化しない。一方、還元アニールを行うことで、Sr置換した系でも転移温度が減少する。このことから、還元アニールによって酸素を除去することで、系に有効的に電子がドープされることがわかった。さらにPr1.4La0.6CuO4のas-grown試料と還元処理した試料について高エネルギー磁気励起の測定を行った結果、還元処理によって散乱強度が激減することを突き止めた。通常の局在スピン描像では理解できない変化であり、波動関数の広がりの変化に起因する磁気形状因子に対する還元効果であると考えて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の実験手段である中性子散乱とミュオン法が、震災によるJ-PARCの運転が止まったため、約一年行えなかったが、その間、海外実験施設を積極的に使用して実験を継続した。装置のトラブルや余震の影響で、長時間の単結晶育成にも支障が出たが、作る試料を絞り込むことで実験に必要な単結晶を揃えることができ、その結果、当初予定してた通りの実験を行い、Bi2+xSr2-xCuO6では世界で始めてとなる高エネルギー磁気励起の観測を行うことなどができたため。La2-xSrxCuO4との比較から、本研究課題の目的であるマルチダイナミクスの素性がわかりつつあり、目的に沿った研究が展開できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で目指す多自由度が絡むマルチダイナミクスの詳細がわかりつつあるので、今後はその起源に迫るべく、狙いを絞った実験を展開する。具体的にはLa2-xSrxCuO4における磁気励起スペクトルの温度依存性を調べ、ドープされたキャリアの伝導とスピン揺らぎの関係を明らかにしていく。また、還元アニールの効果が顕著であるPr1.4La0.6CuO4の磁気励起については、Ce置換した試料でも同様の測定を行うことで、その変化のメカニズムを解明する。これらの定量的評価から、銅酸化物における特異なスピン相関を決める要因が何であるのかを明らかにする。
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