研究課題
平成25年度は、主にSPring-8の軟X線ビームラインBL25SUにてマルチフェロイック物質TbMnO3の40T磁場領域に及ぶ、パルス強磁場軟X線分光測定を行った。これまで測定することが困難であったマルチフェロイック物質を代表する絶縁性の試料においても、金属薄膜の表面修飾により導電性を付与することで、数十ミリ秒という非常に短いパルス磁場中においても、全電子収量法による軟X線吸収測定を可能にする技術を確立したことは、技術的な点において本研究遂行の大きな成果と言える。当該試料の物性測定においては、強磁場域で電気分極の異常が生じる25テスラ付近において、Tb-M吸収端領域において顕著な吸収強度の増大を観測した。一方の磁気的情報である同じTb-M吸収端における磁気円二色性においては、常磁性的な飽和が見られるのみで顕著な磁気相転移に対応する異常を見いだすことは出来なかった。もう一つの磁性元素であるMnのL端に関しても同様の測定を実施したが、Mnにおいては有意な磁気円二色性信号を観測することが出来なかった。電気分極の異常にMnの磁性増大が関与しているという予測に対して、十分な信号が得られなかったことはMnの磁気モデルを再考する必要があると考えている。また信号自体が小さいことも否定できないたいめ、パルス強磁場分光測定の精度の改善も今後の解決すべき課題である。今回新たに見いだされたTbの吸収異常は、軟X線吸収によって磁場誘起電気分極の変化を捉えた画期的な成果であると言えるが、その起源に関してはマクロな物性の変化が影響を及ぼしている可能性と、電気分極の変化に伴うTbのミクロな配位環境の変化が吸収に大きく寄与するという二つの可能性が考えられることから、現在第一原理計算を用いた吸収スペクトルの解析を進めている。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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表面科学
巻: 35 ページ: 158-163
10.1380/jsssj.35.158
Inorganic Chemistry
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10.1021/ic402580n
http://www.hfpm.imr.tohoku.ac.jp/