研究課題/領域番号 |
23340095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有田 亮太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332592)
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研究分担者 |
池田 浩章 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90311737)
是常 隆 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90391953)
中村 和磨 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60525236)
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キーワード | 強相関電子系 / 計算物理 / 超伝導材料•素子 / 物性理論 / 分子性固体 |
研究概要 |
(1) 近年、ピセンなどの芳香族の分子結晶にアルカリ金属をドープすることで超伝導が発現する実験があいついで報告され、注目を集めている。転移温度は最高で33Kにもなるため、その超伝導発現機構は興味深い。一方、炭素系超伝導体の代表格であるフラーレン系においても、最近A15, fcc構造のCs3C60の新しい合成法が報告され、その高い転移温度(35K)に注目が集まっている。これらの炭素系超伝導体の低エネルギー電子状態について、定量的にどのような類似点、相違点があるかを12種類の系について系統的、第一原理的に解析した。その結果、フェルミ面近傍のバンドのバンド幅、電子間相互作用はほぼ同じエネルギースケール(それぞれ0.5eV, 1eV程度)であることがわかった。一方、超伝導転移温度との関連では、芳香族超伝導体では電子相関と転移温度が負の相関を示すのに対し、C60超伝導体では正の相関を示すことがわかった。 (2)スピン軌道相互作用が強いSr2IrO4では、t2g軌道のレベルはJ=3/2とJ=1/2の二つに分裂する。一つのIrあたり5つの5d電子があり、エネルギーの高いJ=1/2のレベルがhalf-fillingになることが期待される。Sr2IrO4の結晶構造は銅酸化物高温超伝導体の母物質La2CuO4と同じであるので、銅酸化物高温超伝導体のJ=1/2のanalogになる可能性があり、注目が集まっている。特に、バンド幅のエネルギースケールはもとのt2gのそれよりも小さくなるので、5d電子の中間的な電子相関でもモット絶縁体となる可能性が議論されてきた。この系について、第一原理downfoldingの方法を用いて低エネルギー有効模型を構築し、動的平均場理論によって解析した。その結果、Sr2IrO4では反強磁性のinstabilityが系の絶縁化の必要条件であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
追加内定によって平成23年11月下旬から研究が開始されたが、強相関モデル計算と密度汎関数理論の計算を組み合わせる方法については炭素系超伝導体、スピン軌道が強い系についての解析が順調に始まっている。超伝導密度汎関数理論については、フェルミ面が一種類の軌道によって構成される場合についてのコードが完成し、層状窒化物への応用が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
超伝導密度汎関数理論については、フェルミ面が2種類以上の軌道で構成される場合においても正しく機能するように改良を行う。専用の計算機を導入し(平成24年6月に導入された)、炭素系超伝導体など、ユニットセルのサイズが大きい系の計算に挑戦するための準備を行う。 強相関モデル計算については、多軌道のtwo particle self-consistent法の開発を行い、多軌道系超伝導体においてvertex補正の効果を解析するための準備を行う。
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