• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

鉄系超伝導体のスピン・軌道揺らぎと超伝導機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 23340097
研究機関東京大学

研究代表者

佐藤 卓  東京大学, 物性研究所, 准教授 (70354214)

研究分担者 南部 雄亮  東京大学, 物性研究所, 助教 (60579803)
キーワード中性子磁気散乱 / 鉄系超伝導 / 軌道秩序 / 磁気秩序 / 磁気揺動 / X線回折
研究概要

2008年初頭に我が国で発見された鉄系超伝導体は、銅酸化物に続く高い超伝導転移温度を示す物質群であり、その超伝導機構の解明は急務となっている。超伝導の起源としては大きく分けて磁気揺らぎ、および起動揺らぎが考えられるが、本研究の目的は中性子非弾性散乱を用いて鉄系超伝導体の磁気励起およびフォノン励起を詳細に観測する事で、鉄系超伝導体の超伝導機構の解明を目指している。この目的を達成するため、H.23年度は、(i)Ba(Fe,Co)2As2の磁気揺動の面内異方性の詳細測定、(i)DBaFe2(As,P)2の磁気散乱測定、(iii)DBaFe2(As,P)2のX線構造解析、(iv)BaFe2Se3の磁気構造解析、(v)(Li,Na)Fe(As,P)系の単結晶育成等を総合的に行った。
(i)に関しては、常磁性状態での磁気揺動の面内異方性のCoドーピング依存性を測定する事から、最適超伝導組成で面内異方性が最も大きい事を示した。これはバンドキャラクターを反映した磁気励起スペクトル計算とコンシステントであり、常磁性相で対称性を破るような相関を特に必要としない事を意味している。(ii)に関してはPドープに伴う磁気モーメントの減少を定量的に明らかにした。(iii)においては、構造相転移並びに磁気相転移の直上で何らかの新しい秩序化を発見したが、これは磁気秩序相での軌道秩序とは異なる軌道秩序を示唆するものである。(iv)においては、BaFe2Se3の磁気構造を高分解能粉末中性子回折を行う事により決定した。この結果、この系では近年話題になっている245系と同様の4スピン強磁性構造からなるブロック的磁気構造が安定化されている事が分かった。磁気相転移点での結晶構造の詳細な解析は、磁気相転移に伴いFeが僅かに動く事もとらえており、原子構造と磁性の強い関連がここでも示唆される。(v)ではLiFeAsの単結晶育成に成功した上に、LiFeP系の育成にも着手している。なお今後の研究に必要な縦型ブリッジマン炉の設計および製作も済ませた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

国内の中性子施設が大震災でダウンしていたものの、H.23年度に実施を予定していた研究の殆どは海外施設や、X線回折等を行う事により遂行する事が出来た。幾つかの結晶育成については期待通りの成果が得られていないものもあるが、逆に期待大きく越えて発展した123系の成果もあり、総合的に見て順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

縦型ブリッジマン炉が本格的に稼働する来年度からは単結晶育成が更に進展すると期待される為、これまで問題であった111系や245系の単結晶育成にも新たな進展が見られると期待される。さらに、中性子施設に関してはJ-PARCは既に再開しており、JRR-3に関してもH.24年度中には再開が期待できるため、国内で更なる中性子散乱研究が可能になるであろう。この意味で、来年度も予定通り研究が進展するものと期待できる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Block magnetism coupled with local distortion in the iron-based spin-ladder compound BaFe2Se32012

    • 著者名/発表者名
      Y.Nambu, K.Ohgushi, S.Suzuki, F.Du, M.Avdeev, Y.Uwatoko, K.Munakata, H.Fukazawa, S.Chi, Y.Ueda, T.J.Sato
    • 雑誌名

      Phys.Rev.B

      巻: 85 ページ: 064413-1-5

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.85.064413

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Doping-dependent and orbital-dependent band renormalization in Ba(Fel-xCox)2As2 superconductors2011

    • 著者名/発表者名
      T.Sudayama, Y.Wakisaka, T.Mizokawa, S.Ibuka, R.Morinaga, T.J.Sato, M.Arita, H.Namatame, M.Taniguchi, M.L.
    • 雑誌名

      J.Phys.Soc.Jpn.

      巻: 80 ページ: 113707-1-4

    • DOI

      10.1143/JPSJ.80.113707

    • 査読あり
  • [学会発表] 鉄カルコゲナイド超伝導体KxFe2-ySe2の熱処理効果2012

    • 著者名/発表者名
      山崎照夫, 井深荘史, 南部雄亮, 佐藤卓
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学 兵庫県
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] 鉄系スピンラダーBaFe2Se3の磁性2012

    • 著者名/発表者名
      南部雄亮, 大串研也, Fei Du, Maxim Avdeev, 上床美也, 宗像孝司
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学 兵庫県
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] μSRから見た鉄ヒ素系超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2の超伝導と磁性の共存・競合2012

    • 著者名/発表者名
      平石雅俊, 宮崎正範, 幸田章宏, 小嶋健児, 門野良典, 井深壮史, 南部
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学 兵庫県
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] The origin of in-plane spin fluctuation anisotropy in Ba(Fe,Co)2As22011

    • 著者名/発表者名
      S.Ibuka, Y.Nambu, T.Yamazaki, M.Rahn, M.D.Lumsden, T.J.
    • 学会等名
      1st Asia-Oceania Conference on Neutron Scattering
    • 発表場所
      Tsukuba, Japan
    • 年月日
      2011-11-21
  • [学会発表] X線回折によるBaFe2(As,P)2の斜方晶歪みの研究2011

    • 著者名/発表者名
      井深壮史, 佐藤卓
    • 学会等名
      日本物理学会2011年秋季大会
    • 発表場所
      富山大学 富山県
    • 年月日
      2011-09-24
  • [学会発表] CaFe4As3の複雑な磁気構造の群論的解析とCo置換2011

    • 著者名/発表者名
      南部雄亮, Emilia Morosan, 木村宏之, 野田幸男, 佐藤卓
    • 学会等名
      日本物理学会2011年秋季大会
    • 発表場所
      富山大学 富山県
    • 年月日
      2011-09-21

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi