研究課題
前々年度および前年度の研究から Ba122 系における中性子非弾性散乱で見られる磁気揺動の異方性が乱雑位相近似(RPA)の範囲内で説明可能である事が明らかになった。本年度はこの結果の論文投稿作業を行った。加えて、最終年度である本年度では、Ba122系における構造相転移温度以上でマクロ物性に見られるC4対称性の破れの起源、およびBa123系における圧力下磁気相図決定と超伝導の可能性探索の2点に焦点を絞り研究を遂行した。前者に関しては、本科研費で整備したX線用低温クライオスタット環境を最大限活用し、単結晶Ba122系の低温X線回折実験を行った。具体的には BaFe2As2 単結晶の h00 反射の分裂の温度依存性を精密に観測した。その結果、構造相転移(および磁気相転移)以上において僅かながらピーク形状に異方性が観測された。これは160K程度まで残る事が観測されたが、この事は構造相転移以上でも何らかの短距離な構造歪みが残る事を示唆している。一方で、粉末試料に関してはPドープBa122系に関して米国ロスアラモス国立研究所において粉末中性子回折実験を実施した。この結果、やはり、構造相転移温度より十分高温から原子間の局所相関に異常が現れることが分かった。これらの結果は構造相転移点以上でも局所的な(正方晶構造からの)歪みが存在している事を示していると考えられる。他方、Ba123系に関しては (Ba,Cs)Fe2Se3 等の置換系に対する圧力下電気抵抗測定を中心に幅広い研究を行った。残念ながら現在までにこの系での金属化は観測されていないが、圧力下電気抵抗の温度依存性をVariable Range Hopping モデルで解析した所、相関長の増大が明瞭に示された為、今後の発展研究としてはより高圧での物性測定実験が望まれる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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