研究課題/領域番号 |
23340098
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
内藤 方夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40155643)
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研究分担者 |
上田 真也 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60442729)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / モット絶縁体 / MBE、エピタキシャル / 強相関電子系 / 超伝導材料・素子 |
研究概要 |
これまで、銅酸化物母物質は反強磁性モット絶縁体であり、高温超伝導はモット絶縁体に正孔または電子のいずれかをドープすることにより発現すると考えられてきた。しかし、研究代表者らは、酸素欠陥を取り除くことにより従来モット絶縁体と考えられてきたT'構造銅酸化物母物質RE2CuO4の超伝導化に成功し、銅酸化物母物質が普遍的にモット絶縁体であることに疑念を提示してきた。 平成24年度は、主に無限層構造母物質SrCuO2の超伝導化を試みた。スパッタ法により、Sr1-xLaxCuO2薄膜(x = 0.0, 0.05, 0.10)を作製し、Laドープの効果を詳細に調べた。成膜直後のas-grown 薄膜はいずれも、室温抵抗率10ミリohmcm、低温で弱局在を示し、顕著なドープ量依存性を示さない。すなわち、Laドープ(電子ドープ)によって母物質モット絶縁体が導電化する考えを支持しない。一方、真空還元を施すと、Laドープの効果は劇的である。母物質SrCuO2薄膜の抵抗率はほとんど変化しないのに対して、Laドープした薄膜は抵抗率が0.1-0.2ミリohmcm まで二桁低下し、金属的ふるまいに転ずる。また、x=0.10の薄膜は超伝導化する。これらの結果は、Laドープがキャリアドープというよりも、還元時の酸素の挙動に大きな影響を与えていることを示唆する。これまでに母物質SrCuO2は超伝導化できていないが、原因はCuO2面の酸素欠損だと考えている。 連携研究者のNTT・山本グループでは、これまで超伝導化できなかったT'-La2CuO4の超伝導化に成功した。成膜時に供給する活性酸素分圧を極めて低くすること、格子整合する(110)PrScO3 を基板として用いることが構造安定化と超伝導化のキーポイントになっている。作製されたT'-La2CuO4は残留抵抗比が~20程度の「良い」金属である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルク試料に対する研究は助教の異動等で進捗が滞っている。新たな助教の採用を考えている。平成24年度は無限層構造薄膜の超伝導化に集中して研究を進め、Laドープの役割をある程度絞り込めたと考えている。また、同じ無限層構造を有するニッケル酸化物にも着手しており、導電性の薄膜を得るまでに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
2008年以来、研究代表者らは「高温超伝導体に対するドープしたモット絶縁体描像」に対する見直しを主張してきた。しかし、この主張が多くの研究者に受け入れられるまで時間を要している。一方で、最新のバンド計算が我々の主張を支持していること、また、共同研究を通じて、多くの共同研究グループが我々の主張を理解し始めていることは喜ばしいことである。これまで、インパクトファクターの高い雑誌に投稿しても、相手にしてもらえない状況が続いたが、最近では2人のレフェリーのうち、1人からはaccept判断を得られるようになった。今後さらなる支持者を増やし、インパクトファクターの高い雑誌への掲載までこぎつけたい。そうすれば、認知度が飛躍的に向上すると考える。
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