研究課題
本研究では,Yb系強相関化合物を中心に比熱,ゼーベック係数,ネルンスト係数,熱伝導率などの物理量を極低温,磁場,圧力といった極限環境を組み合わせて多角的に調べることで,量子相転移およびその近傍にみられる異常な電子状態を理解することを目的としている.平成26年度は,本研究で見出したYbCo2Zn20において見られる銅の10000倍にも達する巨大ゼーベック係数の起源,メタ磁性およびその周辺で見られる輸送係数の非フェルミ液体的挙動をさらに詳しく調べた.その結果,低温・零磁場でのゼーベック係数の増大は,比熱のそれと比べ顕著であること,さらにはそれら比熱とゼーベック係数の比qが,単純金属から強相関系までの幅広い物質で見られる,温度にほぼ依存しない振る舞いとは異なることがわかった.そして,そのような有効質量の大きな電子状態は,0.3 K程度の非常に小さなエネルギースケールをもち,磁場を印加すると急激に抑制されることから,低磁場におけるゼーベック係数の異常な増大はこの小さなエネルギースケールもつ電子状態と関連があることがわかった.そしてメタ磁性が見られる磁場に達すると,ゼーベック係数の異常な増大は抑えられると同時に比qは温度と磁場にはほぼ依存しない通常の強相関金属で見られる振る舞いに転じることから,バンドに依存した電子相関とメタ磁性の関係が示唆される.一方,このYbCo2Zn20の関連物質であるPrT2Zn20(T=Ir,Rh)の電気抵抗率における非フェルミ液体的挙動について詳細に調べたところ,YbCo2Zn20とは異なり,いずれもある単一のパラメータで電気抵抗率がスケールすることを見出した.これはこの系における非フェルミ液体的挙動の背景に単一の物理が存在することを意味している.さらにそのスケーリング関数が最近提案されている四極子近藤格子模型でよく説明できることを見出した.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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