研究概要 |
本研究では,ラマン・ブリュアン散乱およびNMR分光測定より,メタン,エタン,プロパンをゲストとする混合ガスハイドレートおよびメタンハイドレートのゲスト分子占有状態を調べるとともに,弾性定数の圧力依存性を決定する.これを実現するために平成23年度では,(1)既有の高分解能ラマン分光装置(日本分光,NR-1800)の高感度化,(2)ガスハイドレートのゲストであるメタン,エタン等の分子に含まれる^<13>Cの核種に対応した高周波増幅器(5-220MHz)によるNMR分光装置の検出回路系の再構築,(3)ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)を用いた混合ガスハイドレート単結晶作製技術の確立を行った. (1)の高分解ラマン分光装置の高感度化,および(2)の高周波増幅器によるNMR分光装置の再構築は順調に進み,すでに高分解能高感度ラマン分光測定および^<13>C-NMR測定は可能な状態になっている.(3)の混合ガスハイドレートの単結晶作製技術の確立は,本研究課題の遂行において重要な位置を占める.これについては,実際に窒素ハイドレート,プロパン-窒素混合ガスハイドレート,プロパン-メタン混合ガスハイドレートの単結晶を作製し,その偏光顕微鏡観察および高圧ブリュアン散乱測定より,作製した単結晶試料が弾性的性質を評価するために十分な結晶性を有しているか調べた.その結果,適切な温度圧力条件を選ぶことによって,良質な混合ガスハイドレート単結晶が得られることが分かった.上述したように,平成23年度に計画した研究計画は,概ね達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた成果をもとに,平成24年度以降はNMR測定用に調整した混合ガスハイドレート試料をNMR専用DACに封入し,単結晶を作製したのちラマン散乱,^<13>C-NMR測定を行う.また,ブリュアン散乱測定用DACを用いて,同じ試料の単結晶を作製し,その弾性的性質を評価する.最終的に混合ガスハイドレートの弾性的性質とゲストガス分子のホスト水ケージ占有性との関係を明らかにしていく.
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