研究課題/領域番号 |
23340102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 久純 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (70124873)
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研究分担者 |
小倉 昌子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30397640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 動的平均場近似 / モット転移 / 第一原理電子状態計算 / KKRグリーン関数法 / 遷移金属カルコゲナイド |
研究概要 |
実際のクーロン積分あるいは遮蔽クーロン積分を用いる前段階として、相互作用を模型化したパラメータを用いた多体問題ソルバーを用いた動的平均場を行う計算機コードを作成するとともにテスト計算を行い、この段階での計算がうまく行われていることを確認した。多体問題ソルバー以外の第一原理計算部分についてはKKRグリーン関数法をベースにしたプログラムの開発は完成しており、現在多体問題ソルバーの組み込みを行っている。 それとともに、最適化有効ポテンシャル法(OEP)を用いて、厳密交換項およびRPAレベルの相関効果を取り入れた計算機コードの開発および計算を行い、自己エネルギーの相殺、直接項の遮蔽がうまく働き、アルカリ金属、強磁性遷移金属等においてうまく交換相関相互作用が記述できることを確認した。当初の計画では、裸のクーロン積分を用いて、原子内相互作用を二次摂動レベルで扱かった動的平均場によりモット転移の記述をすることを考えていたが、sp電子による長距離クーロン相互作用の遮蔽効果を入れなければ現実的なレベルでのモット転移の記述は困難という結論に達した。このことをうけ、現在、最適化有効ポテンシャル法においてポテンシャルを構成するために用いる相互作用カーネルを多体問題ソルバーに直接利用するための手法を開発している段階である。 テスト計算としては模型による計算以外に、最適化有効ポテンシャル法を用いた計算によって、モット転移以外の物理は良く記述できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的平均場近似による研究の一端として、最適化有効ポテンシャル法を用いた研究を行ってきた。その結果からみて、最適化有効ポテンシャル法でRPAを適用することによって得られる遮蔽クーロン相互作用を原子内相互作用に用いることの必要性が明らかになった。この部分は当初考えなかった点であり、この部分の手法開発およびプログラム開発が必要となったために、相当な研究計画の変更を余儀なくされた。しかし、遮蔽クーロン相互作用の積分核の計算は完了しており、研究の遅滞は大きくなく、さらにより充実した研究内容となったため研究の進捗はおおくね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に前年度までの研究をさらに進展させる。 前年度までに行ってきた研究により、厳密交換項とRPAを用いた最適化有効ポテンシャル法(OEP-RPA)を用いた計算によっ て、大きな交換相互作用を相関項で補正することは簡単ではないことが分かっている。従って、当初考えていた 、裸のクーロン相互作用を用いた二次摂動計算による動的平均場近似の方針を変更して、遮蔽クーロン型の相互 作用を二次摂動によって取り入れた動的平均場近似によってモット転移の記述をすることとした。この変更は実際の計算における大幅な計算量の増加を意味するが、最適化有効ポテンシャル法に用いたRPA計算の手法を生か して、実用的な計算が可能なコードを完成する。これらの新しい知見と新規手法を積極的に活用することによって、当初に構想した研究成果以上の新しい発展が得られると考えている。具体的には最終年度において、繰り込まれたクー ロン積分を用いた計算機コードを完成する。この計算機コードでは前年度までに開発した最適化有効ポテンシャルを利 用して、RPAダイアグラムで表される遮蔽クーロン積 分2個の積を含む摂動項の計算を行う。また、既約自己エネルギーを求めるための数値計算における問題点を解決して、精 度の良い計算をすすめるためのアルゴリズムを開発する。実際の系に対して計算が可能なコードを完成させて、遮蔽クーロン相互作用の2次摂動によるシングルサイトの電子相関の取り扱いを用いた動的平均場近似の有効性を検証する。
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