研究課題
本研究では、芳香族炭化水素ピセンへの化学的なキャリアドーピングによって実現した超伝導体に対象を絞って、合成法の確立と超伝導発現機構の解明を目指した。新規合成法では、低温液相合成法と電気化学合成法を行った。これは高温での固相合成法では複数の結晶相が混在し単相化が困難であることが明らかになったためである。超伝導相の単相化を目指し、Kドープピセンの精密相制御を進めた。低温合成法では、相制御が可能であり単相試料を得ることに成功した。電気化学反応を利用して高フラクション試料の合成を目指した。現在、電気化学合成法によるピセン超伝導体の高フラクション化を行っている。物性研究では、結晶構造、電子状態、基本物性を明確にすることを目的とした。格子定数はc軸が拡張する相と縮小する相が存在することがわかった。拡張する相は理論的に予想されるK1K2構造(1つのKがピセン層間、2つがピセン層内)と一致し、c軸が縮小する相はK3構造(3つのKがピセン層内)と一致する。これらは異なるTcを持つ超伝導相に対応する。ラマン散乱実験から超伝導に最適なキャリア数がK3piceneの組成比であることがわかった。また、分子内電子格子相互作用の計算から、超伝導相が分子由来のフォノン機構で説明可能であることを示した。2つのTcを持つ超伝導試料ではTcの圧力変化が異なることを見いだした。この結果も結晶構造の違いを反映していると考えられる。また、電気抵抗測定によって超伝導転移とゼロ抵抗の観測に成功し、バルクの超伝導体であることを示した。共同研究としては、ピセン薄膜にKをドープした試料で金属的なフェルミ端の観測に成功した。また、圧力下電気抵抗では、圧力効果の異なる二つの超伝導転移が確認された。各相は異なるTcの圧力依存性を示し、これは磁化測定から得られた結果と一致した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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