研究課題/領域番号 |
23340105
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木村 昭夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00272534)
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研究分担者 |
植田 義文 呉工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (10127615)
宮本 幸治 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教 (50508067)
仲武 昌史 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教 (60342599)
奥田 太一 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (80313120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / トポロジカル表面状態 / ヘリカルスピンテクスチャー / スピン角度分解光電子分光 / キャリア制御 |
研究概要 |
平成24年度は引き続き、バルクのトポロジカル絶縁体新物質の開発と測定を行った。それと平行して、分子線エピタキシー(MBE)法を用いて強磁性ニッケル単結晶基板上にBi2Se3薄膜の作成も試みた。得られた成果の概要は以下の通りである。 1)本研究グループが2010年に発見した、理想的な表面ディラックコーンを有するトポロジカル絶縁体TlBiSe2について、スピン角度分解光電子分光を行い、ヘリカルスピンテクスチャーの直接観測に成功した。さらに元素置換によるバルクキャリア制御に成功した。2)トポロジカル絶縁体、Bi2Te2SeやBi2Se2Teについて、ディラック点上部だけでなく、下部についても高いスピン偏極度が観測され、将来的な両極性トポロジカルデバイスへの応用に大きく期待ができることを示した。3) 相変化材料、熱電変換材料として知られていたGeBi2Te4単結晶のトポロジカル表面状態が70%もの高いスピン偏極度を有することを明らかにした。これにより表面状態のスピン偏極度の結晶中に存在する原子配列の乱れによる影響は少ないことがわかった。 4) 走査型トンネル顕微鏡を用いて、トポロジカル絶縁体Bi2Te2Seの非占有状態側に明確な準粒子干渉パターンを観測することができた。この結果は非占有状態側でもそのトポロジカル表面状態としての性質が維持されていることを示している。今後、光励起のスピン流発生などへの応用につながると期待される。5)分子線エピタキシー法によりNi(111)単結晶表面上に典型的なトポロジカル絶縁体Bi2Se3薄膜の作成を試みたところ、エピタキシャル成長をしていることが分かった。 これらの成果を、国内外の学会にて報告した。その一部については、国際学術雑誌に掲載あるいは採択されており既に国内外から高い評価を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、本科学研究費補助金の期間中に開発した「高効率スピン・角度分解光電子分光装置」を用いて、世界最高のエネルギーおよび運動量分解能を活かした実験データを得ることができた。例えば、3元系のトポロジカル絶縁体、Bi2Te2SeやBi2Se2Teについて、ディラック点上部だけでなく、下部についても高いスピン偏極度が観測され、将来的な両極性トポロジカルデバイスへの応用に大きく期待ができることを示した。本研究成果は広島大学よりプレス発表され、朝日新聞(平成24年11月5日)に掲載された。さらには、相変化材料として知られるGeBi2Te4についても、70%以上もの高いスピン偏極度が表面状態に現れることを明らかにした。これらの成果はすでに物理学分野では高い権威をもつフィジカルレビューレターズ等に掲載されており国内外で高い評価が得られている。また、平成23年度以降の研究成果に基づき、国内外から研究代表者に15件以上の招待講演の依頼があった。さらには研究代表者等が、国際会議で当該成果を招待講演で発表した際、海外研究者からの共同研究の数件の申し込みがあった。これらは、当研究グループで開発したスピン角度分解光電子分光装置の性能が世界最高レベルに達していることを証明する事例である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、バルクのトポロジカル絶縁体新物質の開発と分子線エピタキシー(MBE)法を用いたエピタキシャル膜の作成を行う。強磁性体基板上にトポロジカル絶縁体薄膜を作成することで、時間反転対称性を破ることにより、トポロジカル表面状態が波数空間で移動したり、エネルギーギャップが開く様子を直接観測したい。またその際のスピンテクスチャーの変化についても、広島大学の高効率スピン角度分解光電子分光装置を用いて捉えたい。得られた成果を、国内外の研究集会、学会にて積極的に発表する。またそれらの成果を論文としてまとめ投稿する。
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