研究課題/領域番号 |
23340108
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
矢野 英雄 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70231652)
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キーワード | 超流動ヘリウム / 量子渦 / 量子乱流 / 量子流体力学 |
研究概要 |
超流動ヘリウム(^4He)の渦の量子化の発見から半世紀がたつが、渦の慣性質量や波動といった動的な性質は、いまだ明らかになっていない。それは、渦芯が0.1nmと大変細く、渦の運動を観測する手段がなかったためである。我々は、超流動ヘリウムの量子渦が境界(壁)に付着し、境界の振動に伴って量子渦も運動することを発見した。この量子渦のユニークな性質を利用し、渦の線形・非線型運動を実験的に明らかにすることを目的としている。本研究を遂行するにあたって、量子渦の運動検出装置の開発と、量子渦の付着制御法の確立を必要とする。本年度の主な研究実績は以下のとおりである。 1.量子渦の運動検出装置として振動ワイヤ法を開発した。量子渦を振動ワイヤに付着させ振動することにより、量子渦の運動を検出する。運動の高感度検出のために、極微細超伝導線を開発した。これにより量子渦運動の検出性能試験を行い、線形運動から非線形運動への移り変わりを検出した。さらなる性能評価により、運動検出の感度を上げる。 2,量子渦の付着制御法を確立し、渦の付着しない振動ワイヤの製作に成功した。これにより超流動中を飛行する量子渦(渦環)の検出を可能にした。この成果を基に、量子渦環の飛行速度の測定に、世界で初めて成功した。 3.ワイヤの振動によって起こる量子渦環の非線形運動が、量子渦環を生成することを発見した。2の量子渦環の飛行速度測定から、生成される量子渦環のサイズや飛行方向の分布を調べることで.非線形運動を明らかにできると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり実験装置の開発・製作をおこなった。また製作した一部の装置について性能試験をおこない、期待された結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
線形波動と量子渦の慣性質量の研究を進める。開発した量子渦の付着制御システムを用いて、壁に付着する渦の量や長さの制御法を確立する。また付着境界に極微細超伝導線を用いることで、振動による量子渦の応答を高感度に検出する方法を確立する。これらの方法による量子渦の振動エネルギースペクトルの精度を向上させ、量子渦の線形波動を調べる。また量子渦の非線形運動について、量子渦環が生成されることに着目し、量子渦環の生成と飛行の研究を進める。量子渦の生成に非線形運動を起こす振動物体を、また飛行する渦の検出に極微細振動ワイヤを用いて、渦の飛行速度測定法を確立する。
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