研究課題/領域番号 |
23340109
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
坂井 徹 兵庫県立大学, その他の研究科, 教授 (60235116)
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研究分担者 |
中野 博生 兵庫県立大学, その他の研究科, 助教 (00343418)
肘井 敬吾 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (00444068)
岡本 清美 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10114860)
礒田 誠 香川大学, 教育学部, 教授 (10184590)
奥西 巧一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30332646)
利根川 孝 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80028167)
野村 拓司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (90373240)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子スピン系 / スピンナノチューブ / フラストレーション / カイラリティ / 量子スピン液体 |
研究概要 |
平成25年度は、S=1/2の3本鎖スピンナノチューブについて、ユニットセルは正三角形に固定して、格子の形状を保ったまま、スピン空間に異方性を導入した理論模型について、数値的厳密対角化と有限サイズスケーリングの手法を用いて、その物性を調べた。有限サイズスケーリングの手法の1つである現象論的繰り込みに基づく解析によると、各結合定数における容易面型(XY的)異方性が十分強ければ、スピンギャップが消失してギャップレスのスピン液体が実現することが判明した。そこで、この手法を用いて、鎖方向と桁方向の結合定数の比を変化させたときの異方性の量子相転移点を定量的に求め、スピンギャップ相とギャップレスのスピン液体相を含む基底状態の相図を示した。その結果、格子歪みの無いユニットセルが正三角形のスピンナノチューブでも、現実的な結合定数の異方性があれば、ギャップレスの量子スピン液体が実現することが判明した。この基底状態相図に基づいて、今後のスピンナノチューブ実現に向けた新物質設計の指針を示した。この研究成果について、第12回アジア太平洋物理会議(APPC12)及び、International Symposium on Science Explored by Ultra Slow Muon (USM2013)という2つの国際会議において口頭講演を行い、JPS Conference Proceedingsに原著論文を出版した。さらに日本物理学会秋季大会、及び東京大学物性研究所国際ワークショップ「Emergent Quantum Phases in Concdensed Matter」において招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画4年のうち3年が経過したが、スピンナノチューブの理論模型について、当初予定していたスピン・電荷・カイラリティの3自由度のうち、スピンとカイラリティという2つの自由度が結合する模型を理論的に解析し、相互作用パラメータと磁場を変化させたときの基底状態相図を得ることに成功した。したがって、磁場によるカイラリティの制御という一つの目標は達成された。さらに、当初予定されていたカイラル秩序相のほかに、結合異方性によるギャップレスの量子スピン液体相という新しい相を発見した点で、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、スピンナノチューブにおけるスピン・電荷・カイラリティという3自由度のうち、スピンとカイラリティという2自由度については、かなりよく理解できたと思われる。残り1年間においては、本研究の最重要課題ともいうべき超伝導の駆動力となる量子スピン液体相とカイラル液体相の問題を扱うため、最後の電荷の自由度から来る影響を取り入れたスピン模型を考える。電子系の模型であるハバード模型から出発して、強相関の極限から摂動展開すると、量子スピン模型に帰着するが、最も重要な摂動項は、リング交換と呼ばれる多スピン相互作用であることが知られている。そこで、最終年度はこのリング交換を取り入れた量子スピン模型に基づいて、スピンナノチューブにおける電荷の自由度の効果を検討する。
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