研究概要 |
前年度に達成されたHg-1223における世界最高温度Tc=153Kでの超伝導状態の観測をうけ、これをさらに推進するために、1.Hg-1223のアンダードープあるいはオーバードープ状態でのTcの圧力相図の構築、2.さらにCuO2面の枚数の多いバリエーション(Hg-1234,1245,1256)における最適ドープ状態でのTcの圧力相図の構築を行った。1.に関しては、Tcの圧力に対する応答、dTc/dPの圧力下の変化の様子はほぼ同じになるように見え、つまり大気圧から最高20-25K程度の上昇があり、圧力相図において外挿をおこなうと23GPa付近で飽和しTcが下降に転ずるように考えることができる。このことから、Hg-1223においては圧力に対してドーピング量の変化は生じず、この場合のTcの変化は格子の収縮による結果であると考えることができる。2.に関しては、常圧から10GPa付近までのTcの圧力による向上は、CuO2面の数にあまり関係なく+2.0~2.5K/GPaであるが、より高圧力側においてはCuO2面の数が多くなるほどTcの上昇が抑制されることが分かった。もっとも枚数の多かったHg-1256においては最高圧力ではTcが上昇から下降に転ずる様子まで確認することができた。この現象はいまのところ、各CuO2面でのキャリア数が圧力によって再配分され、いままで高いTcを出していたもっとも外側のCuO2面におけるキャリアが減少するためではないかと考えている。
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