研究課題
時間依存密度汎関数理論に基づくパルス光と物質の相互作用に関する計算科学的研究を進展させた。光電磁場と電子ダイナミクスを同時に記述するマルチスケールシミュレーションの方法を用い、以下の進展が得られた。京コンピュータを用いた大規模シミュレーションを遂行し、フェムト秒レーザーによる透明物質の表面加工の初期過程に相当する第一原理計算をクォーツを例にとり行った。レーザーによるアブレーションが起こる閾値強度を、計算から得られる光から電子へのエネルギー移行と、結晶の凝集エネルギーを比較することにより推測した。その結果、従来実験的に測定されてきたアブレーション閾値強度やその深度が、計算で得られる結果と良く一致することを確認した。これにより、本研究で開発したシミュレーション法が、フェムト秒レーザーによる非熱加工の記述と理解に有効であることが実証されたと考えている。また、同じく京コンピュータを用い、パルス光による不可逆な変化が起こる直前の光強度で起こる、極めて非線形性の強いレーザーと物質の相互作用の例として、数サイクルのパルス光がクォーツ薄膜を透過するときに起こる波形変化を実験グループと共同で調べた。計算と測定の比較から、主要な非線形効果は3次の非線形光学効果である光カー効果であることが特定され、光強度が増すにつれ物質中に生じる電子励起による誘電率変化も重要となることが見出された。また、異なる強度のパルス光伝播を比較することにより、非線形分極を時間領域で分析することが可能となることを示し、応答時間の遅れに関する分析を行った。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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