研究課題/領域番号 |
23340117
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 慎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10401150)
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キーワード | 量子エレクトロニクス / 原子・分子物理 / 低温物性 |
研究概要 |
本研究の目的は、量子縮退した極低温極性分子気体を世界で初めて実現することである。特に、光格子中で量子縮退した極性分子気体を生成することができれば、超固体などの新奇物性の開拓を行うことが期待できる。 極低温極性分子の生成のために、ここではまず2種類の原子気体を量子縮退まで冷却し、その後にフェッシュバッハ共鳴を用いて原子を組み合わせてゆるく束縛した分子(フェッシュバッハ分子)を作り、さらに光を用いて振動回転基底状態の極性分子を作るという方式をとる。フェッシュバッハ共鳴での磁場掃引の速度などを最適化して、できるだけ分子の作成効率を上げることが大事である。 効率の最適化にはフェッシュバッハ分子の検出が必須である。しかし、フェッシュバッハ分子は非常にゆるくしか束縛していないため、その光学遷移は原子とほとんど変わらず、光学的に両者を区別することは困難である。作成したフェッシュバッハ分子の分子数の検出のため、昨年度までは原子数の減少を用いていた。しかし、そもそも実験条件のゆらぎにより原子気体中の原子数がゆらいでしまうため、S/N比が低く、信頼にたるデータをとることが難しかった。そこで我々は作成した分子数を直接観測する手法として、シュテルンゲルラッハ撮影法を開発した。これは、フェッシュバッハ分子と原子の磁気モーメントの違いを利用して、トラップから開放後に磁場勾配を印加し、分子と原子を空間的に分けてからイメージする手法である。シュテルンゲルラッハ撮影法の成功により、RF会合を用いた場合の分子生成率と磁場掃引の違い、また3体ロスレートの評価などが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子縮退した極低温極性分子の実現は量子エレクトロニクス分野の悲願のひとつであり、実験的にも困難が予想されるもののひとつである。事実、米国(JILA)のグループも量子縮退近くまでは漕ぎ着けたが、量子縮退の実現はできていない。我々のグループはフェルミオン分子を作成しているJILAのグループより遅れはとっているものの、着実に進展している。特に同じ実験室内で100マイクロケルビン程度の高温の分子に対しては誘導ラマン断熱遷移が既に成功しているため、光格子中で効率的なフェッシュバッハ分子の作成ができれば、それより先は順調にいくものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
3次元光格子中でフェッシュバッハ分子を作成する。誘導ラマン断熱遷移を用いてフェッシュバッハ分子を振動回転基底準位に遷移させる。原子気体の位相空間密度を高めることで、3次元光格子中の分子の充填率を高め、隣同士のサイトにある分子間の双極子ー双極子相互作用を検出する。
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