現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の実験を行ううえで、主となる光源として用いる通信波長帯の高繰り返し光源が、年度途中で不具合のために使用できなくなり、通信波長帯におけるエンタングルメントの生成実験と無雑音増幅実験には遅れが生じた。そのため、波長1064nmのピコ秒モード同期パルスレーザーを用いてエンタングルメントの改善実験を進めて一定の成果を得ることができたほか、量子情報への応用を前倒しで実施することにし、高繰り返しパルス光のホモダイン検出実験を行い、量子鍵配送を実現する見通しを得ることができた。これらの状況を総合して、やや遅れていると判断した。遅延の生じた研究についてより詳細に述べると、これまでに我々は、通信波長帯パルスレーザーを光源とし、エンタングルメントを安定に生成する技術を開発し(PRA, 79, 050302(R), 2009)、量子状態の転送に成功した(Opt.Express, 19, 1360, 2011)。これらの実験は低繰り返しの光源を用いていたために、量子測定や量子情報への応用には課題があった。そこで、通信波長帯の高繰り返し光源を用いた実験を本研究で進めている。実験の手順は、光源となるパルスレーザーの第2次高調波を発生し、この第2高調波を励起光としてパラメトリック増幅を行い、スクイーズド光を発生した。エンタングルメントは、スクイーズド光を2つ発生し、これら2つの位相を直交させ、ビームスプリッタで重ね合わせることにより生成する。しかし、波長1535nmの繰り返し周波数10MHzのパルスレーザー不具合により、この光源を用いた実験では、エンタングルメントの生成まで至ることができなかった。更に、ホモダイン検出器を用いてショット雑音の測定を行ったところ、レーザー動作が不安定であり、余分な雑音が発生していることが判明した。そこで、繰り返し周波数の改善を100倍までにとどめたレーザーを購入した。
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