研究課題/領域番号 |
23340120
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川勝 年洋 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20214596)
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キーワード | 高分子 / 不均一構造 / 粗視化モデル / 自己無撞着場理論 / 動力学 / ミクロ相分離 / メソスケール / ハイブリッド手法 |
研究概要 |
高分子と界面活性剤の作るメソスケールの構造の動力学モデルの構築を目指し、流体力学や動的密度汎関数理論のような連続場を用いたシミュレーションとミクロな粒子シミュレーション(分子動力学法やモンテカルロ法)を結合させた「ハイブリッド理論」の開発を行った。 1)膜貫通タンパク質の生体膜への侵入の過程 自己無撞着場理論と分子動力学シミュレーションのハイブリッド手法を用いて生体膜構造を効率的にモデル化し、さらに並列計算機への移植を行った。これにより、従来は困難であった非常に大規模な生体膜のシミュレーションが実現可能となった。 2)生体膜に閉じ込められた高分子鎖(タンパク質など)の影響による膜の変形 生体膜に高分子鎖を閉じ込めた構造を、自己無撞着場理論とPhase Field理論を融合させたハイブリッド法を用いて記述した。この方法論を用いて、膜の融合と分裂に伴うトポロジー変化の効果を取り入れるために、ガウス曲率の効果を取り入れる方法を定式化した。また、膜と流動場とのカップリングの定式化も行った。 3)界面活性剤溶液に生じる紐状ミセル系の粘弾性特性 紐状ミセルを多数の粗視化粒子で表現する分子モデルを提案し、この紐状ミセルの分子モデルと流体力学方程式(ナビエ-ストークス方程式)を結合させることで、流動に誘起された紐状ミセルのネットワークの構造変化と応力特性を計算する手法を開発した。 4)高分子濃厚系の相分離構造の粘弾性特性 重合度の十分に大きな高分子濃厚溶液に生じる、絡み合いを起源とする粘弾性特性を動的自己無撞着場理論を用いて定式化し、ブロック共重合体のラメラ相に対して振動的ずり流動場を印可するシミュレーションを実行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2)生体膜に閉じ込められた高分子鎖(タンパク質など)の影響による膜の変形、3)界面活性剤溶液に生じる紐状ミセル系の粘弾性特性、4)高分子濃厚系の相分離構造の粘弾性特性、の3つのサブ課題に関しては当初の目標を十分に達成しているが、1)膜貫通タンパク質の生体膜への侵入の過程のサブ課題だけはタンパク質と膜の複合系のシミュレーションの実行ができておらず、膜の大規模シミュレーションのみが成功している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質と生体膜の複合系のシミュレーションを実行できるように、パラメタチューニングを行う。また、それぞれのサブ課題に関して,プログラムの並列化を進めることで大規模系のシミュレーションを実行に移す。平成23年度は当初予定していた研究補助員の雇用が遅れたために研究の遅れを生じたが、平成24年度は予定通り研究補助員を雇用し、研究に専念させる。
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