研究課題/領域番号 |
23340121
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 貴志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60293669)
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研究分担者 |
山本 量一 京都大学, 工学研究科, 教授 (10263401)
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キーワード | 脂質二重膜 / 流体膜 / 相分離 |
研究概要 |
近年の膜形成技術と直接観察技術の著しい向上と相俟って人工的モデル膜を用いて生体膜を物理学の観点から明らかにしていこうという研究動向が世界中で見られる。本研究は人工的に作られたモデル複合膜(例えば、二成分モデル脂質膜)に対する理論モデルの構築と「独自の数値計算方法」でのシミュレーション解析により、生体膜が示す多様で複雑な変形現象を、物理学の観点から明らかにすることを研究目的としている。このような脂質複合膜の構造と変形ダイナミクスを解明するために(a)出来る限りシンプルな理論モデルを構築し(b)数値シミュレーションにより現象を統一的に再現し(c)統計物理学の観点から理論的にその起源を明らかにすることを研究目的としている。 H23年度は、現実の生体膜のモデル膜として2成分脂質膜を考え、その2成分脂質膜のできる限りシンプルな理論モデルの構築を行った。そこでは今まで十分考慮されてこなかった曲げ弾性率の局所組成依存性の効果を取り入れたプログラムの開発を行った。また、(1)で開発したプログラムを用いたテスト的な数値計算を行い実験結果との比較を行った。 また、本研究課題申請後の新たな展開として、同大学内で生体細胞を研究している実験研究者(京大iCeMS:楠見教授)と多成分膜について共同研究を行う機会を得た。彼との共同研究により、細胞内外の情報伝達のプラットフォームと考えられているラフトのダイナミクスを記述するモデル方程式を考え、ラフトがリガンドの刺激に応じて形成される動的な存在であることを非平衡熱力学的な観点から捉えられることが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
流体力学効果、ガウス曲げ弾性率の局所組成依存性の効果、及び、高分子の存在が膜の形態変形に及ぼす効果についての研究もH23年に行う予定であったが、曲げ弾性への組成依存性についての計算に多くの時間を費やし、これらが、十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
申請書で掲げた目的と研究計画に大きな変更はない。11.の現在までの達成度で述べたように、流体力学効果、高分子の効果、ガウス曲げ弾性の組成依存性の効果の研究が少し遅れているので、その方面に力を入れて研究を進めていく予定である。新たに、同大学で細胞膜の実験研究者(iCeMS:楠見教授)と細胞内外の情報伝達を担っているラフトついて議論を行う機会を得、本研究課題の枠組みでラフトの動的な形成を議論することが可能であるということが分かってきた。申請書には、この点は書いていなかったが、このような方向にも研究を展開していくことを考えている。また、今年度は論文という形で成果を発表することにも力を注ぐ計画である。
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