研究課題/領域番号 |
23340123
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 康之 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00225070)
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研究分担者 |
岩下 靖孝 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (50552494)
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キーワード | ソフトマター / 光ピンセット / マイクロレオロジー / 流体力学相互作用 / ホログラフィー |
研究概要 |
本研究課題では、ソフトマターからなる複雑流体の力学特性をメソスコピックスケールの分解能で3次元的に観測可能なマルチビーム3次元マイクロレオロジー顕微鏡の開発を目指して研究を行なう。平成23年度はこのための要素であるマルチビームレーザーピンセットとホログラフィック顕微鏡の開発を行ってきた。 まず、LD励起固体レーザー(新規導入)を光源として、多画素数の空間光変調素子SLM(新規導入)を利用した位相ホログラムを用いたマルチビームレーザーピンセットの開発を新たに行った。SLMに表示する種々の位相画像を試験的に作成し、多数のコロイド粒子を2次元および3次元的にさまざまに規則配置することに成功した。一方、粒子位置の3次元検出を行なうことが可能なホログラフィック顕微鏡に関しては、平成24年度に導入予定の高感度CCDカメラを前倒しで導入し、現在開発中である。 さらに本年度は、開発したマルチビームレーザーピンセットを用いてレーザー光の波面をらせん状に変調した「光渦」を作成し、これにより円環上で多数のコロイド粒子に一定の駆動力を与えて周回運動させる実験を行なった。その結果、流体力学的相互作用により粒子クラスターが生成消滅するリズム運動を観察することに成功した。さらに、SLMに表示する位相画像をうまく設計することで、円環上の光強度分布を様々に変調させることにも成功し、強度分布の不均一がコロイドの集団運動を劇的に変化させることを見出した。これらの成果は国内外の学会で発表するとともに現在、専門の学術誌に論文として投稿中である。このように人工的に作成したポテンシャル中での多粒子の協同運動は、微生物の集団運動の起源を物理的に解明する大きな手がかりになるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災による予算執行の遅れのために、マルチビームレーザーピンセットの開発を優先した。その結果、ホログラフィック顕微鏡の開発が遅れ気味となっている。また、マルチビームレーザーピンセットを用いた自己駆動粒子系の研究は、当該テーマの世界的な流行を考えて優先して研究を推進した。その結果、新たなオリジナルの多くの発見があり、当該分野の進展に貢献できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はホログラフィック顕微鏡の開発を優先して進めることで、当初の目的を達成することができると考えている。来年度以降は、具体的な対象を用いた研究を推進することが中心となる。このため、特に開発したマルチビーム3次元マイクロレオロジー顕微鏡の適用対象としてなるべくインパクトの高い対象を選び、本手法の優位性をアピールしたいと考えている。そこで、国内外の研究者が多く参加するソフトマター分野の研究会、学会等に積極的に参加することで情報収集および意見交換を行ない、共同研究も推進したいと考えている。
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