研究課題/領域番号 |
23340123
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 康之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00225070)
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研究分担者 |
岩下 靖孝 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50552494)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ソフトマター / 光ピンセット / マイクロレオロジー / ホログラフィー / 流体力学相互作用 / コロイド結晶 / 融解・昇華 |
研究概要 |
本研究課題では、ソフトマターからなる複雑流体の力学特性をメソスコピックスケールの分解能で3次元的に観測可能なマルチビーム3次元マイクロレオロジー顕微鏡の開発を目指した研究を行なっている。 平成24年度は、まず、昨年度に開発したマルチビームレーザーピンセットを用いて、レーザー光の波面をらせん状に変調した「光渦」を作成し、これを用いて単独および複数の円環状経路上でコロイド粒子に一定の駆動力を与えて周回運動させる実験を行なった。均質な媒質中においても、複数の粒子間に働く流体力学相互作用により、複雑な協同運動が誘起されることが期待される。実際に単独の円環上で複数のコロイド粒子を駆動した場合には、同径粒子の場合にはさまざまなリズム運動が出現し、異径粒子の場合には、安定なクラスター形成が見られた。一方、同心円環上の粒子間では速度差を減少するような運動が安定化すること(一種の同調現象)がわかった。このような自己駆動するミクロ粒子の流体力学相互作用を介したダイナミックな構造形成は、バクテリアなどの協同運動を物理的に解明するモデル系となりうると期待している。 さらに、光ピンセットにより生じる局所温度勾配を用いて、熱泳動効果(Soret効果)によりコロイド粒子を2次元的配列(結晶化)させ、その融解、昇華過程をリアルタイムかつ1粒子レベルで観測した。融解過程における結晶の局所的な構造の不均一性の時間発展や揺らぎに関して詳細な情報を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中にホログラフィック顕微鏡の開発を終了し、プローブ粒子の3次元的追跡を行う予定であったが、マルチビームピンセットによる複数のトラップサイトの強度の均一化および光渦の円環状での駆動力の均一化のために時間を費やしたため、ホログラフィック顕微鏡の開発を終了することができなかった。 また、ホログラフィック顕微鏡の光源として、通常のHe-Neレーザーではコヒーレンス長が長すぎて、光路上の他の粒子やセル面の影響を受けるため測定の妨げとなり、精度のよい干渉像を得ることができないことがわかった。このため、より低コヒーレンスの光源を新たに導入して開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は前半でマルチビーム3次元マイクロレオロジー顕微鏡の開発を終了し、さまざまな不均一性を有するソフトマターの3次元構造とその局所力学物性の関係を明らかにすることを目指した研究を推進する。 その例として、(1)多数の結晶核をマルチビームピンセットで作成し、本年度も実験を行った熱泳動によるコロイド結晶化を起こし、不均一結晶化の素過程の観察と欠陥構造のダイナミクスの研究、(2)ゲル化過程における構造不均一性とその局所力学物性の変化の研究、などを予定している。
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