研究課題/領域番号 |
23340124
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
加藤 直 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (30142003)
|
研究分担者 |
好村 滋行 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90234715)
川端 庸平 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 助教 (50347267)
|
キーワード | メゾスコピック系 / リオトロピック相 / 物性実験 / 物件理論 / レオロジー / 界面活性剤 / X線小角散乱 / ラメラ相 |
研究概要 |
両親媒性分子が作るラメラ相にずり流動場を印加すると、多重膜ベシクルのみで充填された「オニオン相」に転移する現象は、多くの研究者の注目を集めているが,オニオン相の形成条件や転移機構については依然として不明の点が多い。これらを明らかにするために、23度は以下の研究を実施した。 (1)リエントラントなラメラ/オニオン転移を示す系の探索:非イオン界面活性剤 C_<14>H_<25>(OC_2H_4)_5OH (C_<14>E_5)と水の2成分系に対して、一定ずり速度下でずり応力/X線小角散乱同時測定(Rheo-SAXS)の測定を行い,温度上昇・下降いずれにおいてもラメラ→オニオン→ラメラ転移が起こることを確認した。 (2)ラメラ→オニオン転移過程とオニオン→ラメラ転移過程の比較:上記の系は、低温側と高温側の両方に転移温度を持つ。そこでそれぞれの転移温度近傍において、一定ずり速度下の温度上昇および下降に伴う転移過程を時分割Rheo-SAXSにより追跡した結果、低・高温側共に、オニオン→ラメラ転移過程はラメラ→オニオン過程の逆を辿ることがわかり、転移機構に対する重要な知見が得られた。 (3)温度上昇に伴うラメラ→オニオン転移を支配する要因の検討:静止状態におけるSAXS測定により、低温側の転移温度付近でラメラ繰返し距離が温度上昇と共に急激に増大することがわかった。一方高温側の転移温度付近ではこのような変化が見られないことから、一定ずり速度下の温度上昇に伴うラメラ→オニオン転移は繰返し距離の増大に支配されていることが明らかになった。 (4)ずり速度上昇に伴うリエントラント転移が起こる条件の探索: C_<14>E_5系において、種々の濃度・温度において、ずり速度10^<-1>~10^3 s^<-1>でずり応力測定を行った結果、35wt%、36℃において、ずり速度上昇に伴うリエントラント転移を示唆する結果が得られた。 (5)Rheo-SAXS装置の改良:SAXSと小角光散乱の両方に使用可能なレオメータを購入し、まずRheo-SAXS用のセルの設計・製作を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)温度・ずり速度動的相図を完成させる予定であったが、ずり速度上昇に伴うリエントラントラメラ/オニオン転移が起こる条件の探索に、予想外の時間がかかった。(2)当初、交付予定金額の7割しか交付されず、残り3割の交付通知が9月になったため、レオメータの納入が年末となり、予定していた偏光顕微鏡/小角光散乱/ずり応力同時測定(Rheo-POM/SALS)装置の製作に着手する時期が大幅に遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)温度変化に伴うリエントラント転移が確認された濃度において、小角光稼乱/ずり応力同時測定を行う。またずり速度上昇に伴うリエントラント転移が示唆された濃度・温度において、rheo-SAXS実験を行い、転移を確認する。次いで3次元動的相図の作成に向けて、温度-ずり速度相図とずり速度-濃度相図作成を行う。 (2)Rheo-POM/SALS測定装置を完成させ、性能試験を行う。 (3)定常ずり流動によりオニオン相に転移した試料に対して粘弾性スペクトルの測定を行う。 (4)温度変化に伴うリエントラント転移を再現する理論を構築する。
|