研究課題/領域番号 |
23340124
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
加藤 直 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30142003)
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研究分担者 |
好村 滋行 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90234715)
川端 庸平 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50347267)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | メゾスコピック系 / リオトロピック相 / 物性実験 / 物性理論 / レオロジー / 界面活性剤 / X線小角散乱 / ラメラ相 |
研究概要 |
両親媒性分子が作るラメラ相にずり流動場を印加すると、多重膜ベシクルのみで充填された「オニオン相」に転移する現象は、多くの研究者の注目を集めているが,オニオン相の形成条件や転移機構については依然として不明の点が多い。これらを明らかにするために、24度は以下の研究を実施した。 1.ずり速度上昇に伴うラメラ→オニオン→ラメラ転移: C14E5系において、23年度に種々の濃度・温度において行なったずり応力のずり速度依存性の測定結果に基つき、35wt%、36℃においてRheo-SAXS測定を行った結果、ずり速度上昇に伴うラメラ→オニオン→ラメラ転移を見出した。さらに同じ濃度・温度において、ずり速度下降によっても同様の転移が起こることがわかった。昨年度見出した、一定ずり速度下の温度変化に伴うリエントラント転移においても温度上昇と下降に対する可逆性が見られたことから、3次元相図作成の見通しが立った。 2.オニオン相の粘弾性スペクトルの測定: オニオン相が形成される温度において、定常ずり流動場によりオニオン相に転移させた後、粘弾性スペクトルを測定した。温度を変えて同様の測定を行った結果、低温側の転移温度付近で貯蔵弾性率が最も大きく、温度上昇により減少することがわかった。 3.一定ずり速度下の温度変化に伴うラメラ→オニオン→転移を支配する要因の理論的検討:多面体型オニオンの陵部分と頂点部分に蓄積される自由エネルギーを、オニオンの半径、静止状態のラメラ繰返し距離、単分子膜の曲げ弾性率・サドルスプレイ弾性率・自発曲率を用いて表現した。静止状態の相図から予測される自発曲率の温度依存性と、23年度に測定した静止状態のラメラ繰返し距離の温度依存性に基づき、自由エネルギーが温度に対して極小を持つことがわかった。このことは、温度変化に伴うリエントラント転移が起こる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度交付申請時の計画として、(1)リエントラントラメラ/オニオン転移の確認と3次元動的相図の作成 (2)Rheo-POM/SALS装置の製作と性能試験 (3)オニオン相の粘弾性スペクトルの測定 (4)温度変化に伴うリエントラント転移の理論構築 を挙げ、(2)-(4)についてはほぼ達成した。(1)について、3次元相図作成には至らなかったが、ラメラ相の低濃度限界付近において、一定温度下のずり速度変化に伴うリエントラント転移を見出し、3次元相図作成の見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
23、24年度の研究成果を踏まえ、下記の方策で今後の研究を推進する。 1.界面活性剤濃度,温度,ずり速度を変数とする3次元動的相図の作成: 23年度に見出した一定ずり速度下の温度変化に伴うリエントラント転移と、24年度に見出した一定温度下のずり速度変化に伴うリエントラント転移の条件を基にして、種々の濃度・温度・ずり速度において粘度測定を行い、オニオン形成範囲を推定する。この結果を基にRheo-SAXSおよびRheo-POM/SALS測定を行い、3次元動的相図を作成する。 2.オニオン相の粘弾性スペクトルの測定: 24年度に引き続き、定常ずり流動場により形成されたオニオン相に対して線形領域における粘弾性スペクトルの測定を行い、オニオン形成条件との比較を行う。さらに、オニオンに対する非線形領域における振動ずり流動場の効果を調べる。 3.リエントラント転移の一般的理論の構築: 上記で作成した3次元動的相図と、24年度に構築した温度変化に伴うリエントラント転移の理論に基づき、3次元動的相図を再現する理論を構築する。
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