研究課題/領域番号 |
23340125
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 愛幸 東京大学, 地震研究所, 助教 (90508350)
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研究分担者 |
名和 一成 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (20262082)
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
田村 良明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (90150002)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地震 / 重力 / スロースリップ / 地殻流体 / 測地 |
研究概要 |
プレート沈み込み境界の深さ30km付近には高圧流体が含まれており、スロースリップによってこの流体の流れが生じるという理論モデルがある。このモデルを観測によって実証することは、スロースリップの発生メカニズムを明らかにするとともにスロースリップの予測につながるため、本研究では超高精度な重力計を用いることで、流体の流れによる微小な重力変化をリアルタイムに捉えることを目指している。本年度は、前年度に構築したネットワークによって、沖縄県八重山地方で平成24年5月と12月に発生したスロースリップの期間中に生じた重力変化を観測することに世界で初めて成功した。重力計ネットワークは、西表島と石垣島に1台ずつ設置した絶対重力計と、石垣島に設置した超伝導重力計1台の計3台からなる。この3観測点において、スロースリップをまたぐ約1か月の間に2―6マイクロガル(10億分の2―6G,1G=地球上の平均重力加速度)の重力変化が見られた。なお、大気,海洋,地下水などによっても数マイクロガルの重力変化が生じるため、それらを土壌水分や降雨の観測に基づいたモデルで取り除いている。これらのモデルは、スロースリップの生じていない期間の観測データをさらに蓄積することで高度化できる。スロースリップ自体がまだ2度しか発生しておらず、1回目と2回目のシグナルが完全に同じ様式を示してはいないため、今後、ネットワークを維持し、データ取得を継続していくことで、流体の移動に起因した重力変化を明瞭なものにしていくことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書では、今年度は (1)西表島・石垣島での観測の継続 (2)重力及び地下水データ解析 を行う予定であった。これらは順調に行われているが、重力計設置点周囲の地下水ノイズのうち、台風の時期などに通常のモデルで補正しきれない成分が含まれることが明らかになってきたので、解析手法の高度化が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度までに得られたデータをもとに、スロースリップが 引き起こす流体移動による重力変化のモデリングを行う予定であったが、高度化したノイズ補正を行い、スロースリップによるシグナルの信頼性を高めるためには、さらに長い期間のデータを蓄積することが求められる。そのため、平成25年度にはすぐにモデリングに進むのではなく、観測も継続することを計画している。 (次年度使用額が生じた理由と使用計画)当該研究は、スロースリップによる重力変化を観測することを目的としている。観測対象としていたスロースリップの発生時期の予測を、過去の結果に基づいて行ったが、流体圧変動でスロースリップの繰り返し周期も変動するため平成24年9月に当初の予測より3ヵ月遅く発生すると判明した。これにより予測の再検討を行い、観測開始が遅れ3ヵ月の研究期間の延長が必要となった。 物品費:観測機器消耗品(絶対重力計消耗品(レーザーチューブ,オーリング, 交換ベルト等) 820,000円 、旅費:観測機器現地点検費用(1人×2泊3日×8回)800,000円、その他:観測機器運搬費用700,000円が必要である。
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