研究課題/領域番号 |
23340127
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30323653)
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キーワード | 固体地球物理学 / 地殻マントル物質 / 地震波減衰 / 非弾性 / 部分溶融岩石 / マックスウエル周波数 / 粒界すべり / 粘弾性 |
研究概要 |
本研究では、地震波帯域における岩石の非弾性特性とそのメカニズムの解明を目指している。これは、地震学で得られる詳細な3次元地震波速度構造および減衰構造から、地球内部(特に上部マントル)の温度不均質や流体分布について定量的な情報を得るために不可欠となる。代表者らの最近の研究成果から、多結晶体の非弾性データは、マックスウエル周波数fm(Euを非緩和ヤング率、etaを粘性とすると、fm=Eu/eta )で規格化された無次元周波数f/fmのみの関数として、Q-1(f/fm)と表される相似則が存在することが分かった(ただし、Q-1はQの逆数を意味する)。この相似則を用いると、既存の実験データは、地震波帯域(規格化周波数で10の6乗から9乗)をカバーできておらず、より高周波,低温,粗粒での実験の必要性が明らかとなった. これをうけて本研究ではまず、既存の装置の変位計を高いサンプリング周波数に対応した高速の変位計に交換し,高周波(100Hz まで)の測定を可能にした.また低温での運転が可能なインキュベーターを用いることで,先攻研究では行えなかった規格化温度 0.61 以下の温度での実験が可能になった.しかし、より高周波・低温の実験を行う上での既存の装置の限界も明らかになった。試料の Q-1が小さくなる高周波,低温,粗粒の条件可において、小さな Q-1を精度良く測るためには、計測機器のもつ僅かな時間遅れが問題になることがわかった.本研究では、様々な方法を考案して変位計やロードセルのキャリブレーションを行ない、時間遅れの補正方法を確立した。測定できる限界のQ-1の値には、実験装置の剛性が影響を与える。また、実験周波数よりもさらに高周波側にある緩和の大きさを知るには、サンプルの剛性(ヤング率)を精度よく測定する必要がある。そこで、装置剛性に改善を加えた新しい非弾性実験装置を設計・製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の装置を用いた実験の改良は、計画通りに非常に順調に進んでいる。H23年度に新しい装置の設計のみならず製作まで終了できたことは、計画以上の早い進展である。超音波帯域の測定については、やむ終えぬ事情によりH24年度に繰り越して測定を行ったが、良いデータを取得することが出来、計画全体の遅れは解消できた。
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今後の研究の推進方策 |
既存の装置を用いた実験は、順調であり、今後、温度、粒径を系統的に変えて実験を行い、データを取得する。新しい装置は、キャリブレーションの結果、装置の剛性に問題があることがわかったが、変位計を取り付ける位置を変更することで剛性を改善できることがわかったため、必要な修正を行って目的の剛性を達成し、まもなく実験データの取得に入る予定である。特に、新しい装置を用いてヤング率を高精度で測定する意義は大きい。今後は、得られたデータに基づいて、非弾性特性のモデル化も行ってゆく。
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