研究課題
微惑星や成長初期段階の原始惑星の内部は集積に伴い温度が上昇していく。内部の温度が鉄合金の融点より高温になると固体の珪酸塩マントル中を鉄合金メルトがパーコレーションにより沈降しコアが形成されると考えられている。このプロセスは惑星の進化において重要な素過程の一つである。固体珪酸塩中の鉄合金メルトの浸透率は浸透によるコア形成過程を支配する重要な物理量であるが,これまで詳しく研究されていない。本研究では浸透率を高温高圧3次元イメージングと流体シミュレーションを組み合わせて求めることを目的としている。平成24年度は油圧制御装置の改造、数値計算法の開発、浸透率測定実験を行った。SPring-8のトモグラフィプレスの制御としてH23年度に導入した油圧コントローラーの制御能力に不十分な点があったので改造を加えた。これにより,目的とする精度での圧力制御が可能となり、トモグラフィ実験に必要な要件を満たすことができた。浸透率の導出を目的とする数値計算については,H23年度に引き続き格子ボルツマン法のコード開発を進めた。SPring-8のBL20XUを用いた高解像度のX線マイクロCT実験を行った。高温高圧状態で鉄合金メルトと珪酸塩が組織平衡に達するには12時間以上の時間が必要である。放射光実験のビームタイム内でこれを行うことは不可能であるため,あらかじめ目的とした高温高圧状態で組織平衡にした試料を急冷凍結した試料を準備した。これを放射光施設でもう一度高温高圧状態にしてX線マイクロCT方を用いて組織観察を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に書いたように、研究目的は順調に達成している。実験的には最大の懸案であった油圧コントローラーについて満足のいく性能が得られた。また、放射光施設での競争が激しくビームタイムが十分確保できない状況ではあるが、放射光実験も順調に進んでいる。これは、高温高圧で事前に組織平衡化した試料を用いることで放射光ビームタイムの大幅な時間短縮が実現できたことによる。
H25年度以降も予定通り研究を進めていく。鉄合金中に含まれる軽元素の効果を調べるために、化学組成を変えた実験を行う。硫黄の実験はすでに行ったので、炭素とケイ素について実験を行う。浸透率とこれらの関係について明らかにすることを目的に研究を進める。また、マイクロCTから求めたメルトの3次元ネットワーク構造から浸透率の導出を行う。このようにして珪酸塩中の鉄合金メルトの3次元ネット-ワークと浸透率に関するデータの蓄積を行っていく。高温高圧その場観察によるこのような研究はこれまで例がなく、きわめて重要な研究結果が得られるものと考える。
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Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 202-203 ページ: 1-6