研究課題/領域番号 |
23340129
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
浦川 啓 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30201958)
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研究分担者 |
寺崎 英紀 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50374898)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 惑星形成・進化 / 核形成過程 / パーコレーション |
研究概要 |
微惑星や成長初期段階の原始惑星は内部の温度が鉄合金の融点を超えると固体の珪酸塩マントル中を鉄合金メルトが浸透(パーコレーション)により沈降しコアが形成される。鉄合金メルトの固体珪酸塩中の浸透率は,浸透によるコアの形成プロセスを検討する上で欠かすことのできない物理量であるが,測定が困難であるため,いまだに完全には解明されていない。本研究では高温高圧3次元X線イメージングを用いて,珪酸塩内部での鉄合金メルトの連結構造を解析し,その結果を基に格子ボルツマン法による流体シミュレーションから浸透率を求める。そして,浸透率を用いて微惑星や原始惑星中での浸透によるコア形成プロセスを定量的に再検討する。 これまでの研究から実験手法はほぼ確立され,精密な温度圧力条件の下での高温高圧下その場X線トモグラフィ測定ができるようになった。SPring-8ではかんらん石とFe-S系メルトを共存させた状態でトモグラフィ実験を行った。限られたビームタイムで有効に実験を行うため,事前に3GPa,1500Kで15時間かけて組織平衡にした試料をSPring-8で再び溶融させてトモグラフィ測定を行った。これらの実験の結果,現状のイメージング手法では珪酸塩中に分布した金属メルトの微細構造を観察するには若干解像度が不足することが分かった。高圧実験では試料の周りに試料カプセル,ヒーター,圧力媒体などのX線を吸収して散乱する物質が大量にある。これらからの小角散乱がイメージを劣化させることが解像度を上げることができない主要な原因であることが分かった。一方で,安定な高圧発生システムを導入したことから,X線吸収法とX線とモグラフィを組み合わせた金属メルトの密度の精密測定法の開発に成功している。本来の研究を遂行する途上で得られた副産物的な成果であるが,今後の高圧下におけるメルト物性の研究に有効な手法となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去2年間整備してきた小型高圧装置は十分な性能を示している。一方で,放射光を用いた高温高圧“その場“X線トモグラフィにおいて,十分な解像度が得られていない。これは,試料周りに配置した圧力媒体などからの散乱によるものと考えられる。今回の研究では全体が数mmサイズの試料で1~2ミクロンの空間解像度が必要であるが,上記の理由から達成できていない。結像光学系の応用などでこの問題を解決できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
放射光を用いたイメージング実験を行い,金属メルトと固体珪酸塩の混合物の共存状態を3次元イメージとしてマイクロCTから調べ,シミュレーションから浸透率を様々な金属組成に対して求めることを目標に研究を進める。現在直面している高温高圧その場トモグラフィ実験の解像度が上がらない問題に対しては,結像光学系などのイメージング技術の適用によって,その解決策を探っていく。また,高温高圧その場観察から必要十分な質のデータがとれない可能性があることを想定し,確実に高解像度の3次元イメージがとれる常温常圧のX線トモグラフィ実験から急冷試料中の珪酸塩と急冷金属メルトの3次元構造を調べる研究も同時に行う。
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