研究課題
1.3MPaの法線応力下において0.1mm/sから10mm/sのすべり速度範囲において、岩石試料外部に設置したロードセルによってマクロな摩擦を測定した。メートルオーダの岩石試料より得られた摩擦係数は、既往の研究で得られているセンチメートルオーダの摩擦係数とほぼ一致し、摩擦係数に関しては、そのスケール依存性は小さい事がわかった。さらに、試験機の強度を上げるために、反力支持部品の交換と、岩石試料の幅を狭くする改良を行った。この改造により、摩擦係数は、より精度よく測定可能になり、1.3MPaの法線応力をかけた場合、15mm/sあたりのすべり速度において、すべり弱化の挙動を示す事がわかった。岩石試料側面に設置した歪みゲージおよびAEセンサーのデータ解析より、破壊が試料端まで達していないイベントが多数発生していた事がわかった。それらのイベントは、必ずしも、剪断強度の高い場所でおこっているのではなく、しかも、すべりが生じた後の応力レベルの低下も、背景の応力場とはあまり相関がない事がわかった。このことは、ミクロな摩擦は必ずしも、クーロン摩擦則に沿っていない可能性がある。さらに、摩擦すべり実験中にすべり面を透過する波動の測定を行った。stick slip前に透過波の振幅が減少するデータが得られた。さらに詳細な解析を行うことで、すべり面の接触状態と透過波振幅との関係が得られる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ほぼ、年度当初に予定していた研究を遂行する事ができた。また、そこでの実験上改良すべき点も明確にすることができた。岩石試料側面に設置した歪みゲージやAEセンサーでは、破壊伝播の詳細を捉える事が不十分であったため、岩石試料内部にこれらのセンサーを設置する必要がある事がわかった。さらに、透過波の実験の際に、波動がすべり面を通過する際の減衰が予想以上に大きい事がわかり、送信センサーの出力あげるとともに、受信センサーの感度を上げる必要がある事がわかった。
マクロな摩擦係数に関しては、試験機の強度をこれ以上あげるためには、既存の大型震動台を用いている限りは、限界があるため、マクロな摩擦係数の測定に関しては、本年度の実験で得られたデータを詳細な解析を行う事とする。stick slipによる破壊伝播の性質に関しては、まだ、うまく測定できていない部分があり、その性質を理解するまでには至っていないため、次年度以降も、より詳細な破壊伝播の性質が得られるよう、より詳細な測定を行っていく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)
Pure and Applied Geophys.
巻: 170 ページ: 1-2
10.1007/s00024-012-0476-6