研究課題
2.6MPaおよび6.7MPaの法線応力をかけ、0.1mm/sの載荷速度で、すべり摩擦実験を行った。岩石試料側面に設置したAEセンサー及び歪ゲージの測定により,スティックスリップ地震の発生プロセスに関するデータが得られた。スティックスリップ発生直前に、10m/s程度の非常にゆっくりと成長する初期スロースリップフェイズが観測され、スロースリップ領域が40mmを超えたあたりで,破壊成長速度は加速し,初期加速フェーズを形成した。さらに、スロースリップ領域の内部の一点から,不安定すべりが成長し、実験断層面全体に破壊が伝播していった。このような初期破壊伝播は、6.7MPaの法線応力の実験で特徴的に見られた。一方,2.6MPaでの実験においては,不安定すべりが発生する前に、多数の前震が発生し,本震の不安定すべりへと成長していった。さらに、このスロースリップの様子は,岩石試料内部に設置した歪ゲージにおいても観測されており、スロースリップが2次元的に伝播していく様子が捉えられた。また、岩石試料に与えた法線力と岩石試料が受ける剪断力を、岩石試料外部に設置した荷重計により測定し,岩石の摩擦係数を測定した。5mm/s-15mm/sあたりの載荷速度を与えたとき,摩擦係数は低下する。その傾向は,一見、センチメートルオーダの岩石試料を用いた実験と同じように見えるが,仕事率と摩擦係数の関係を見てみると,メートルオーダの岩石試料を用いた本実験のほうが早く低下することがわかった。このことは,すべり面における母岩の形状やガウジ生成層の不均質が摩擦係数に影響を及ぼしていることが示唆される。さらに、AEセンサー特性を補正するためのデータを取得し,断層面を透過する波動の測定を行った。送信子として低周波数の横振動センサーを用い、受信する波動のS/N比の改善をはかった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は,事前に予定した実験を実施することができ,解析に必要なデータを得ることができた。さらに,そのデータの速報的な解析より,地震破壊の初期フェーズの詳細を捉えることができた。断層すべり面直下の岩石試料内へ歪ゲージやAEセンサーを設置したことにより,初期スロースリップの断層面における2次元的な伝播過程を捉えることができた。前年度の実験データの解析結果を詳細に検討し、センサー設置密度を調整したため,初期スロースリップイベントを精度よく捉えることができ,しかも,その加速過程から、不安定すべりに移行するプロセスも捉えることができた。このように,破壊理論に基づいた数値シミュレーションによる初期破壊現象のモデル化に耐えうるだけの,精度のよい,高品質のデータを取得出来た。また、マクロな摩擦係数のスケール依存性に関しては,前年度,取得出来なかったデータを取得し,その全体像を描くことができた。
初期スロースリップイベントの解析のためには,断層面上におけるミクロな変位を精度よく取得する必要がある。大型振動台を用いるというオペレーション上の制約のために、非接触型変位計を用いて,ローカルな変位を測定する必要があるが,未だ,時間/空間分解能に優れた精度の良いセンサーによる測定ができていない。来年度は,ミクロな変位を精度よく測定出来るセンサーを開発し,スロースリップイベント発生時の変位分布を測定したい。変位の時空間分布が得られると,破壊先端におけるエネルギー収支の精密な議論が可能となり、破壊力学のフレームにおいて,地震の動的破壊伝播を記述し,そこで得られるパラメータに制約を与えることができる。
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Rep. Nat'l Res. Inst. Earth Sci. Disas. Prev.
巻: 81 ページ: 15-35