研究課題
昨年度の実験により、stick slip地震発生直前にslow slipが卓越する場合と前震活動が卓越する場合が存在する事がわかった。そこで、これら地震発生直前の活動様式の要因調べるため、6.7MPaおよび3.3MPaの法線応力下において、slow slipおよび前震の再現実験を行った。その結果、地震発生前の断層面のダメージの程度によって、本震前の活動がコントロールされていることがわかった。さらに、摩擦実験によって生成された摩耗物(ガウジ)の観察により、黒色ガウジと灰色ガウジからなる摩耗物で、灰色ガウジの生成量と地震直前の活動が関係している事がわかった。灰色ガウジは、ダメージを受けた断層面で多く生成される傾向があり、ダメージの程度と本震発生前の活動が関係する事を裏付けるデータとなっている。さらに、摩擦係数のスケール依存性に関しても考察を行った。センチメートルスケールの岩石試料を用いて得られた摩擦係数と同じ条件でメートルスケールの岩石試料を用いて得られた摩擦係数は有意に異なり、その原因は断層面上における摩擦の不均質分布にある事がわかった。摩擦実験中に摩耗物が生成されると、摩耗物によって局所的な法線応力分布が変化し、摩擦係数の空間的なばらつきを作り出す。これまであまり考慮されてこなかった摩擦係数の空間的なばらつきは、自然界においても普通に存在し、地震発生シミュレーションにおいては十分考慮する必要がある。また、歪ゲージやAEセンサーを岩石試料中に埋め込み、それらのデータを用いて、stick slip地震の発生、成長過程をモニターし、面内および面外方向の破壊伝播速度を推定する事に成功した。岩石試料内部のセンサーにより、破壊フロントをモニター出来た事により、実験的なアプローチによる岩石破壊伝播の性質の解明への貴重なデータを取得する事ができた。
2: おおむね順調に進展している
岩石摩擦のスケール依存性においては、これまでの実験により、十分なデータを取得出来、その解釈においても、納得のいく成果をあげる事ができた。また、stick slip地震発生直前の現象においても、昨年度把握した現象を、再現し、その成因を考察出来るデータの取得に成功した。さらに、2次元的な破壊伝播の様子を精度よく推定し、岩石試料内部における破壊伝播の様子のモニターに成功した。当初予定していた実験をおこない、期待していた成果を出す事ができた。
次年度は、異種岩石同士の摩擦を調べる事をターゲットとしている。本来、異種岩石同士の摩擦は、実験においてはあまりやられておらず、理論研究が先行している。しかしながら、実験によって、理論において想定していない現象が生じる可能性があり、重要な研究である。これまでの実験が順調に行われてきたため、最後に、異種岩石同士の摩擦データを取得し、大スケールの岩石摩擦の性質を調べるまとめとする。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 2件)
Earthquake Science
巻: 28 ページ: 97-118
10.1007/s11589-015-0113-4