研究課題/領域番号 |
23340135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深町 康 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20250508)
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研究分担者 |
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
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キーワード | 南極海 / 南極底層水 / 海氷 |
研究概要 |
南極海インド洋セクターのケープダンレー沖では、平成20-21年に斜面域で取得した係留観測データから、沿岸ポリニヤでの高い海氷生産に起因したローカルな南極底層水の生成が示唆されていた。このデータの解析を、衛星による海氷データの解析と合わせて進めることによって、この海域からの南極底層水の流出量が南極海全体での生成量の6-13%を占めることが明らかとなった。この事実は、この海域が、ウェッデル海、ロス海、アデリーランド沖に続く、第4の主要な南極底層水の生成域であることを強く示唆している。 沿岸ポリニヤ内での海氷厚の直接観測は、氷山のリスクなどのために殆ど存在しなかったが、平成22-23年にケープダンレーポリニヤ内の陸棚域で、良好なデータを取得することに成功した。このデータの解析を、同時に取得した海洋データの解析と合わせて進めた結果、冬季における薄氷および高い海氷生産に起因すると考えられる非常に高い塩分の陸棚水の存在が確かめられた。また、この現場観測で得られた海氷厚は、これまでに我々の研究グループが作成した衛星マイクロ波放射計データから薄氷厚を見積もるアルゴリズムによって推定された値と概ね一致しており、衛星データを用いた手法の有用性を示唆している。 日本南極観測地域観測隊の「しらせ」で実施する予定であったケープダンレーポリニヤ内での係留系の設置は、厚い海氷に阻まれた昭和基地への接近に予想以上の期間を要し、日程の遅れが出たために実現することが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成20-21年に斜面域で取得した係留データの解析が進み、投稿論文の原稿が完成した。また、平成22-23年に陸棚域で取得した係留データの解析が進み、ポリニヤにおける海氷厚およびその直下での海水特性の変動についての新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成20-21年に斜面域で取得した係留データに基づく投稿論文の原稿については、国際誌へ投稿する。また、平成22-23年に陸棚域で取得したデータについては、更に解析を進め、国際誌への投稿論文の原稿を作成する。 本年度に参加予定の日本南極地域観測隊の航海(平成24年11月から25年3月)では、平成23年2月にケープダンレーポリニヤの下流に当たる斜面域に設置した係留系(5地点)の回収作業に加えて、昨年度の航海で日程の遅れにより実施出来なかった陸棚域での係留系の設置作業(3地点)を実施する。
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