研究課題
本課題では、気候変化予測の不確実性低減に資する成果を得ることを目標として、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)に向けて開発されたコミュニティ気候モデルMIROC5による数値実験と、最新の人工衛星による雲・降水の3次元計測を組み合わせたアプローチを展開する。H24年度は最初の1年であり、以下のような課題を実施した。・MIROC5による物理アンサンブル実験の実施モデルの物理過程の誤差・不確実性が予測不確実性の大きな要因であるため、パラメータに系統的な摂動を与えた多数のモデル実験(物理アンサンブル)を行い、その結果を解析した。特に雲のCO2濃度変化に対する応答に起因するフィードバック過程が、モデルの自然変動の再現性に依存することを明らかにし、成果を発表するとともに論文として投稿した(Shiogama et al. 2012)。・異なる気候モデル間の気候フィードバックの解析IPCC第4次評価報告書の時点でのMIROCと、最新のMIROC5における気候変化実験の詳細な比較から、海面水温の上昇に対する雲のフィードバックに複数の時間スケールが混在していること、そのうち数年以内の速い変化が気候感度の不確実性に最も寄与することが分かった。また、異なるMIROC間で物理過程のスキームを差し替えた物理差し替えアンサンブルを生成し、雲スキーム単独ではなく、それと他の過程(積雲および乱流混合)の結合によってモデルの異なるふるまいが生じていることが分かった。これらの結果は既に国際学会の招待講演などで発表され、論文としても投稿済みである(Watanabe et al. 2012a, 2012b)。・衛星シミュレータのモデルへの導入衛星プロダクトによるモデル検証方法の詳細を検討し、研究分担者の岡本・増永がそれぞれ開発している衛星シミュレータをMIROC5に適用することができた。
2: おおむね順調に進展している
9.で述べた実績のほとんどは、当初計画にあるH24年度の研究内容に相当する。特に、MIROCを用いた各種のアンサンブル生成と解析は、当初の予定以上の進展を得ることができた。
課題代表者のところで、衛星シミュレータの出力結果と人工衛星データの比較解析を行う。このために、H24年度から研究員を1名雇用し、研究の効率化を図る。これにより、経費執行計画が申請当初と変わる(人件費の増加)が、スムーズな研究の遂行には必要な変更である。
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Climate Dynamics
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Journal of Climate