研究課題/領域番号 |
23340138
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
羽角 博康 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40311641)
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キーワード | 熱塩循環 / 極域海洋 / 数値モデル |
研究概要 |
重力沈降流における混合過程に関して、理想化設定における予備実験を実施するとともに、今後高並列計算機上でモデル実行を効率的に行うためのプログラムチューニングを行った。この予備実験を通して、最終的なパラメタリゼーション開発に必要とされる手法として、激しい時空間変動を持つ輸送フラックスの時間平均を時空間平均された物理場から導く解析手続きを構築した。また、次年度に行うウェッデル海を対象とした現実設定のシミュレーションの準備として、境界条件の作成を行った。 潮汐に関して、既存の海洋大循環モデルに潮汐強制力を導入し、比較的低解像度の全球海洋シミュレーションを実施することを通して全球的な潮汐の再現性を確認した。引き続いて、次年度以降に行う現実設定のシミュレーションの準備として、南極周囲を特に高解像度(大陸棚から大陸斜面にかけて水平数km格子)にしたモデルの設定を作成し、予備的な数値実験を行いながらモデルパラメータを確定する作業を行った。 氷床-海洋相互作用に関して、棚氷下面における熱力学過程(海水結氷・棚氷融解とそれらに伴う高塩分水排出・淡水供給、および棚氷から離れた部分での過冷却水の取り扱い)のモデル化を行い、棚氷下の海洋循環を扱うモデルを構築した。開発されたモデルを用いて理想化設定における数値実験を数多く実施し、得られた結果の物理的な妥当性を検討することを通して、モデル化された物理過程の検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潮汐を導入した海洋大循環モデルの現実設定シミュレーションへの適用において想定していなかった問題が発生し、繰越により研究計画を一部変更したが、変更後の計画に基づいて順調に完了することができた。その他の研究項目については特段の問題なく遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画のまま研究を実施する予定である。重力沈降流における混合過程に関しては、現実設定の超高解像度シミュレーションを実施し、深層水形成過程におけるエントレインメント過程の実態把握を行い、最終的なパラメタリゼーション開発につなげる。潮汐に関しても南極周囲の大陸棚域をターゲットとした現実設定シミュレーションを行い、潮汐が高密度水の形成・輸送過程に及ぼす影響を評価する。氷床-海洋相互作用に関しては、南極周囲の棚氷をすべて含んだシミュレーションにより、棚氷下での高密度水形成過程を定量的に把握する。
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